カンジダ・アウリス 診療の手引き 第2.0版
はじめに
Candidozyma auris(Candida auris)(以下、カンジダ・アウリス)は、2009年に日本で初めて報告されて以降、短期間で世界中に拡散し、現在では国際的に重大な脅威となっている多剤耐性真菌です。世界保健機関(WHO)が2022年に発表した「真菌優先順位リスト」においても、最も警戒すべき「最優先(Critical Priority)」群に分類されており、その脅威は現在も継続しています。
これまでの流行では、海外の医療機関における大規模なアウトブレイクが中心で今のところ国内で爆発的な流行には至っていませんが、一度院内に侵入すると環境耐性が強く除菌が困難であるため、平時からの備えと早期発見の体制構築が不可欠です。
『カンジダ・アウリス診療の手引き 第2版』では、初版以降に蓄積された国内外の知見や感染防止対策を大幅に拡充しました。検査診断、治療戦略、感染防止対策、報告対象と報告先など必要な情報に素早くアクセスできるよう、各章を独立した構成とし、重要な対策についてはあえて繰り返し掲載することで、情報の周知徹底を図っています。
昨今、さまざまな新興・再興感染症が注目される中で、真菌症への関心は必ずしも高いとは言えません。しかし、カンジダ・アウリスは、いつ、どこの医療機関に持ち込まれてもおかしくない状況にあります。特に免疫不全患者や集中治療を要する重症患者にとって、本菌による侵襲性感染症はきわめて高い致死率をもたらす恐れがあります。
本『手引き』を手に取り、国内での感染拡大阻止に向けた備えを固めていただくことで、医療従事者が安全に診療にあたり、患者へ最善の医療を提供できる一助となることを切に願っています。
2026年3月
研究分担者 石金 正裕
概要
近年、諸外国において多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるCandidozyma auris(Candida auris)(以降、カンジダ・アウリス)による血流感染症等の侵襲性感染症の事例が多数報告され、問題となっている。
- 多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるカンジダ・アウリスの海外株は、環境中で長期間生存するため集中治療室(ICU)などでの医療機器を介したアウトブレイクの事例が米国などから複数報告されている。院内で環境面への接触を含む感染などによりヒトからヒトに容易に伝播し、侵襲性感染症例は高い致命率を示す。
- 抗真菌薬への薬剤耐性率が非常に高く、米国疾病対策・予防センター(CDC)によると、分離株の約1/3が2種類以上の抗真菌薬に耐性であることが報告されている。加えて現状臨床現場で使用可能なすべての種類の抗真菌薬に耐性である株も報告され、薬剤耐性(AMR)対策の観点からも非常に重要な真菌種である。
※本手引き(第2.0版)は、2026年3月の情報を基に作成しました。今後の知見に応じて、内容に修正が必要となる場合があります。厚生労働省、国立感染症研究所等のホームページから常に最新の情報を得るようにしてください。
令和7年度 厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)JPMH23HA2006の助成を受けた研究班「AMRに関するアジア太平洋ワンヘルス・イニシアチブ(ASPIRE)の実行のための体制整備に資する研究」(研究代表者:国立感染症研究所 菅井基行、研究分担者:国立国際医療センター 石金正裕)

















