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カンジダ・アウリス 診療の手引き 第2.0版

カンジダ・アウリスの疫学

Ⅰ海外における流行状況

  • カンジダ・アウリスは2009年に日本より初めて報告されたカンジダ属真菌種で1)、現在では世界各国から感染症例が報告されている。
  • カンジダ・アウリスは、ヒトの手を介した直接的な接触感染や、環境表面を介した間接的な接触感染により医療現場で容易に伝播し、アウトブレイクを起こすことが報告されている2)
  • カンジダ・アウリスには主に4つの遺伝子型(clade)があるとされている。一方、2018年にイランで第5クレード(clade V)3)、2024年にバングラデシュおよびシンガポールで第6クレード(clade VI)4, 5)の報告もある。
  • アジア:2011年に韓国において最初の侵襲性感染症例の報告があり6)、その後は2013年にインドで複数の病院における真菌血症のアウトブレイクの報告があった7)
  • アフリカ:2014年には南アフリカで、アフリカ大陸で最初となる4病院での真菌血症の報告があった8)
  • 米国:米国では、2013年に最初の症例が確認され、2016年にCDCがClinical Alert9)を発出したことを契機に、州または地域の公衆衛生当局およびCDCへの報告が求められるようになった。その後、CDCに集約される臨床例および保菌例の報告数は年々増加し、2023年には4,500例を超える臨床例が確認された10)
  • 欧州:2016年に英国でヨーロッパ初の大規模な院内アウトブレイクが報告された11)。また、同国の大学病院ICUで2013年に発生し2018年に報告されたカンジダ・アウリス感染症のアウトブレイク事例では、感染症例および保菌例は70例に達し、収束までに2年以上要したが、腋窩で使用する体温プローブが感染伝播の一因と考えられた12)。さらに英国では2024年に年間178例が報告され、累計637例に達し13)、2025年4月からカンジダ・アウリスが届出対象病原体として指定され、それまでの任意報告から義務報告へと移行し、ヒト検体を検査した機関は英国保健安全保障庁(UKHSA)に報告することが義務づけられた14)
    一方、2022年に報告された北イタリアのリグーリア州におけるアウトブレイク事例では、同州の8つの医療機関にまたがって277例のカンジダ・アウリス感染症例・保菌例が発生し、近隣の州にまで感染伝播が及んだ15)。このほか、スペインでも2016年以降に院内アウトブレイクが報告されており、フランス、ドイツ、北欧諸国を含む複数の国では散発例が確認されている16)
  • 世界各国で院内アウトブレイクが相次いで報告されている状況を受け11)、世界保健機関(WHO)は2022年にカンジダ・アウリスを真菌優先病原体リストの一つとして位置づけた17)

表1に、これまで報告されているカンジダ・アウリスの系統群と世界的な分布を示す3, 4, 18)

表1 カンジダ・アウリスの系統群と世界的な分布
系統群 分布している国
clade Ⅰ インド、クウェート、イギリス、アメリカ、カナダ、オマーン、パキスタン、スペイン、中国、ケニア、ロシア、イスラエル、ドイツ、オランダ、ギリシャ、イタリア
clade Ⅱ アメリカ、イギリス、日本、韓国、マレーシア、オーストラリア
clade Ⅲ 南アフリカ、イギリス、中国、ドイツ、サウジアラビア、スペイン、オーストラリア、カナダ
clade Ⅳ アメリカ、コロンビア、ベネズエラ
clade Ⅴ イラン
clade Ⅵ バングラデシュ、シンガポール

Ⅱ 国内における流行状況

  • 日本では2009年に、70歳女性の入院患者から採取された外耳道の耳漏から非侵襲性のカンジダ・アウリス(clade II)が初めて検出・報告された1)
  • それ以降は、非侵襲性の報告は複数あるものの19, 20)、国内におけるカンジダ・アウリスの侵襲性症例の報告はなかったが、2020年に国内初となる海外株(clade I)によるカンジダ・アウリス真菌血症により死亡した症例(フィリピンで集中治療歴あり)が、2023年に報告された21)
  • この状況を受け、厚生労働省は事務連絡によりカンジダ・アウリスについての情報提供を各自治体へ依頼した(令和5年5月1日付厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡「多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるカンジダ・アウリス(Candida auris)について(情報提供及び依頼)」)22)
  • 事務連絡の発出以降、2025年1月までに事務連絡に基づく報告症例及び、事務連絡に関連した相談症例として、18都道府県から34例の報告があった。最終的に事務連絡の報告基準を満たしたカンジダ・アウリス感染症症例は8都道府県から報告された8例で、いずれも局所感染症であった。性別は、女性が6例(80%)で、年齢の中央値は61歳(範囲:12~83歳)、40歳以上が6例(75%)を占めた。行動歴に関する情報が得られた4例では、いずれもカンジダ・アウリス検出の過去1年以内の海外渡航歴を認めなかった。
  • 2023年5月から2024年11月までに日本国内で収集された70株(事務連絡に関連して収集された分離株および民間検査会社から提供された分離株を含む)の解析では、cladeⅠが1株(耳漏由来株)のみ認められ、他はすべてcladeⅡであった。また、フルコナゾール耐性株は全体の20%にとどまり、ポリエン系およびエキノキャンディン系抗真菌薬に対する耐性株は確認されなかった23, 24)
  • 国際的な動向や技術的な変更を踏まえ、厚生労働省は症例定義の一部変更を含む事務連絡の改正を発出した〔令和7年1月30日付厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課・医政局地域医療計画課事務連絡「多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのあるカンジダ・アウリス(Candida auris)について(情報提供及び依頼)の改正について」〕25)
    国際的な人流の活性化や薬剤耐性の動向を踏まえ、全国におけるカンジダ・アウリス感染症の発生状況を把握することで、院内アウトブレイクなどに対して早期に探知し介入へと繋げていくことが引き続き重要である。

特徴

Ⅰ 臨床的な視点

  • 他のカンジダ属菌種と比較し、抗真菌薬に対する耐性率が非常に高く、複数国の分離株の薬剤感受性を調査した研究では、93%の分離株がフルコナゾール耐性であり、35%がアムホテリシンB耐性、41%が2種類以上の抗真菌薬に耐性であった。また3系統の抗真菌薬すべてに耐性を示す菌株も確認されている26)
  • 血流感染症などの高い致命率を呈する感染症の報告があり、全身感染における致命率は30~60%と高率である。
  • ヒトへの定着は、鼻腔、鼠径部、腋窩、直腸などさまざまな身体部位に生じ、初回検出時より3カ月以上経過しても検出され得ると報告されている。ヒトへの定着の危険因子には、カンジダ・アウリス保菌者・その周囲の環境との接触が含まれ、ヒトへの定着は、汚染された環境や医療器具などから容易に生じ得ると推察される。

Ⅱ 微生物学的な視点

  • カンジダ・アウリスは2009年に日本より初めて報告されたカンジダ属真菌種であり、日本からの報告においては非侵襲性(慢性中耳炎患者の耳漏から分離)であったが、2009年以降、国内株とは遺伝子型が異なる多剤耐性で重篤な感染症を引き起こす恐れのある株(以下「海外株」という)が、米国、欧州、南米、南アフリカおよびインドなどから報告され、世界的に対応が必要な真菌と認識されている。
     カンジダ・アウリスには下記の特徴が認められる1)
    ①主に4つの遺伝子型(clade I~IV)に分類され、国内で分離される株の大半を占めるclade IIは非侵襲例である。海外で分離される遺伝子型(I, III, IV)は侵襲性感染を起こす例がある20, 26, 27)
    ②国内の多くの検査施設での正確な同定が難しい特徴がある。
    ③海外で分離される遺伝子型は、2系統以上の抗真菌薬に耐性の頻度が高い点も特徴である26)
    ④感染性を維持したまま環境に長期間留まり、不十分な消毒では院内感染の原因となり得る28-31)

診断

 血液培養においてカンジダ・アウリスが培養された場合は、侵襲性カンジダ症の確定診断とされる。血液培養に限らず、脳脊髄液や関節液、組織など本来、無菌的検体から培養される場合も同様である。その際に、真菌学的にカンジダ・アウリスと同定する必要があるが、現状では、同定の信頼性は検査法により差がある。

Ⅰ 簡易スクリーニング

 クロモアガーカンジダの場合:カンジダ・アウリスは白色・ピンク色・紫色など、さまざまな色調を呈し、他のカンジダ属と類似の形状を示すため、おおよそのスクリーニングに止まる32)
 クロモアガーカンジダプラスの場合:カンジダ・アウリスのスクリーニングも可能な選択培地であるクロモアガーカンジダプラスでは青色のハローを伴い、白色~青色の色調を呈するとされている。しかしながら、コロニーの性状や色調だけで正確な同定はできない場合があるため、選択培地による目視による判定は疑いにとどめ、より信頼性のある方法による同定を試みる必要がある33, 34)

Ⅱ 確定診断

  • 現時点では質量分析法あるいは遺伝子検査法によってカンジダ・アウリスと同定された場合に確定例となる35, 36)
  • ただし、質量分析法でカンジダ・アウリスと誤同定される場合も報告されているため、当面の間は遺伝子検査によって最終確認を行うこととする35)

※遺伝子検査の実施については、国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 真菌部にご相談ください。

 ▶国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 真菌部
 ▶shinkin-kensa@nih.go.jp

Ⅲ 診断に関する問題点

  • 上述したように、選択培地での目視では疑い例をスクリーニングすることにとどめて、正確な同定のために更に検査を進めることが必要となる。
  • 生化学的性状あるいは機械同定の場合は他菌種と誤同定されるケースがしばしば認められ、信頼性が低い。質量分析による同定では、同定に使用するデータベースにより類縁の酵母と誤同定する可能性が排除できない35, 36)
  • 最終確定に使用する遺伝子検査は、現状ではrRNA(ITS・D1/D2)領域の塩基配列、あるいは全ゲノム配列の相同性に基づいて判断しているが、信頼性が高い簡易遺伝子検査法の開発が進められている。

治療

 他のカンジダ属菌種と比較し、抗真菌薬に対する耐性率が非常に高く、複数国の分離株の薬剤感受性を調査した研究では93%の分離株がフルコナゾール耐性であり、35%がアムホテリシンB耐性、41%が2種類以上の抗真菌薬に耐性であった。また、3系統の抗真菌薬すべてに耐性を示す菌株も確認されている26)

Ⅰ 感染症の場合

  • 血流感染症などの侵襲性感染症の場合は、原則、抗真菌薬による治療が必要となる。
  • 局所感染の場合は、抗真菌薬による治療の必要性について感染症専門医への相談が推奨される。
  • 抗真菌薬は、同菌の薬剤耐性の傾向や薬剤感受性試験のデータから、経験的にエキノキャンディン系が第一選択薬とされている37, 38)
  • 血流感染症に対しては、エキノキャンディン系が第一選択薬とされているが、エキノキャンディン系は、髄液、眼内、尿路への移行性が限られているため、髄膜炎、眼内炎、尿路感染症の場合では第一選択になりにくい可能性がある。このような病態の場合や抗真菌薬の選択に悩む場合は、抗真菌薬選択について、感染症専門医への相談が推奨される。
  • 感受性検査の結果を待ち、第一選択薬を投与後、臨床経過の確認を実施するとともに、繰り返し血液培養検査などを行い治療効果の判定を行う。抗真菌薬の治療により耐性化を生じやすいことより、再検時の感受性検査も推奨されている39)
  • 表2に成人への抗真菌薬選択の例、表3に日本の実情を考慮した小児への抗真菌薬選択の例を提示する38, 40)
表2 成人への抗真菌薬の例
  投与方法
ミカファンギン 100mg/日 1日1回1時間以上かけて点滴静注
カスポファンギン 投与初日:70mg 1日1回1時間以上かけて点滴静注
投与2日目以降:50mg/日 1日1回1時間以上かけて点滴静注
上記第一選択薬が無効、または持続真菌血症が5日以上続いているとき下記に変更を考慮
・リポソーマルアムホテリシンB 5mg/kg/日 1日1回1~2時間以上かけて点滴静注

*本邦では、侵襲性カンジダ症に対するリポソーマルアムホテリシンBの投与量は2.5~5.0mg/kgの使用が推奨されている40)。一方で、米国CDCのガイドライン38)では、カンジダ・アウリスに対するリポソーマルアムホテリシンBの投与量は5mg/kgが推奨されている。

表3a 生後2カ月以上の小児への抗真菌薬選択の例
  投与方法
ミカファンギン 2~6mg/kg/日(最大量300mg/日*1) 1日1回1時間以上かけて点滴静注
カスポファンギン 投与初日:70mg/m2/日(最大量70mg/回) 1日1回1時間かけて点滴静注
投与2日目以降:50mg/m2/日(最大量50mg/回)1日1回1時間かけて点滴静注
上記第一選択薬が無効、または持続真菌血症が5日以上続いているとき下記に変更を考慮
・リポソーマルアムホテリシンB 5mg/kg/日 1~2時間以上かけて点滴静注

*1:米国CDCのガイドラインでは2mg/kg/日が推奨されているが38)、本邦では侵襲性カンジタ症に対して小児では3~6mg/kgで使用することが多い40)。例えば体重30kgの小児で6mg/kg/日で使用する場合は180mg/日となる。

表3b 生後2カ月未満の小児への抗真菌薬選択の例
第1選択薬 ・アムホテリシンB 初回 0.25mg/kg、漸増により0.5~1mg/kg/日 1日1回3~6時間以上かけて点滴静注
あるいは
・リポソーマルアムホテリシンB 5mg/kg/回1日1回 1~2時間以上かけて点滴静注*1
中枢神経感染症が否定できた場合に考慮*2 ・ミカファンギン3~6mg/kg/回または高用量10mg (~15mgまで増量可能)kg/回1日1回 1時間以上かけて点滴静注*3
・カスポファンギン25mg/m2/日 1日1回1時間かけて点滴静注

*1:米国CDCのガイドライン38)ではアムホテリシンB 1mg/kg 1日1回が第一選択(治療反応不良な場合はリポソーマルアムホテリシンB 5mg/kg 1日1回を考慮)となっている。(この月齢では、中枢神経系や腎尿路系感染症を合併する頻度が高いこと、アムホテリシンBの中枢神経系や腎臓への移行性が高いこと、アムホテリシンBの忍容性が比較的高いこと、リポソーマルアムホテリシンBと比較し死亡率が低かった報告があることなどに基づき、アムホテリシンBが第一選択となっていると考えられる41-43)。ちなみに英国では、新生児も含めてエキノキャンディンが第一推奨となっているが、本ガイドラインでは米国の推奨も考慮し、現時点では表3bの推奨としている44)
*2:ミカファンギンやカスポファンギンは、眼内や尿路への移行性が乏しいため、使用する際にはこれらの臓器への感染も否定されていることが望ましい。
*3:米国CDCのガイドラインでは10mg/kg 1日1回が推奨されている38)。高用量では本邦の添付文書の最大投与量を超えていることに注意

  • 現在、カンジダ・アウリスに対する抗真菌薬の感受性ブレイクポイントはない。しかし、米国CDCでは暫定のブレイクポイントを設定している(表445)
表4 米国CDCによるカンジダ・アウリスの暫定のブレイクポイント45)
抗真菌薬 MIC (µg/mL)
フルコナゾール = > 32
アムホテリシンB = > 2
ミカファンギン = > 4
カスポファンギン = > 2

Ⅱ 保菌の場合

  • 医療従事者の手指や汚染された環境を通じて、同じ病室や病棟の患者の中に保菌者を生じることがある。
  • 保菌の場合は治療対象としないが、保菌患者の10%が感染症に移行することが報告されており、侵襲性感染症を起こさないかについて、注意深く観察する必要がある46, 47)
  • また、保菌の場合でも、接触による水平伝播の結果、ほかの患者へ感染を起こす可能性がある。気管切開チューブ、血管内留置カテーテル、膀胱留置カテーテル挿入時の標準予防策や挿入後の管理に留意する必要がある。

感染防止対策

Ⅰ 院内感染対策

  • 院内伝播を防ぐためには、特に手指衛生の徹底が重要である。さらに、感染症患者や保菌者に対しては、個室隔離を原則とした厳重な接触予防策が有効とされている19, 48)。カンジダ・アウリスでも手指衛生を基本とする標準予防策と感染症患者や保菌者への接触予防策が重要である。ヒトでのカンジダ・アウリスの保菌は数カ月以上持続すると報告されており、特に長期療養型施設や重症患者では長期間継続する可能性がある12, 49)。このため、米国や英国では、現時点では、一度、保菌あるいは感染を認めた患者に対する隔離解除は推奨しておらず48, 50)、本『手引き』でも、さらなるエビデンスが蓄積するまでは、隔離解除は推奨しない。
  • 医療施設における環境整備では、手指が頻繁に触れる高頻度接触表面を重点的に清掃し、必要に応じて汚染箇所の清拭消毒を行うことが一般的に推奨されている50, 51)。カンジダ・アウリスでは、保菌患者の周辺にある物品の表面や、医療器具(体温計、血圧計、パルスオキシメーター、聴診器など)の広範な環境汚染が生じうることが報告されている9, 52)。また、カンジダ・アウリスは環境表面では3週間以上生存できることが確認されており53)、一部のプラスチック製器具では4週間にまで及ぶこともある53)。このため、感染症患者や保菌者の病室では、高頻度接触表面を含む環境表面の清掃および消毒頻度を増やすことを推奨する54)。また、物品の専有化(可能な限り単回使用)が望ましい。特に、感染症患者や保菌者の退院後には、病室の最終清掃および消毒を適切に実施することが重要である。
  • 環境表面の消毒として、エタノール、次亜塩素酸ナトリウムなどの中水準以上の消毒薬が、カンジダ・アウリスに対して有効とされているが、推奨された濃度と接触時間を守ることが重要である37)。クロルヘキシジングルコン酸塩、第四級アンモニウム塩などの低水準消毒薬については、効果は限定的であるとの報告があり30, 37)、米国環境保護庁(EPA)は、カンジダ・アウリスに対して有効性が確認された消毒薬の一覧(List P)を公表している55)
  • 環境の清掃・消毒状況を評価する目的で、環境の培養検査による陰性確認を行う場合、感度の低さ31)や、結果の解釈の難しさ、費用面の課題を踏まえ、慎重に実施の可否を検討する必要がある。

Ⅱ アウトブレイク対応時のポイント

  • カンジダ・アウリスのアウトブレイク対応では、感染症患者や保菌者が確認された時点で速やかにスクリーニング検査を実施し、院内における保菌者を含めた感染拡大状況を把握することが重要である31)。さらに、疫学調査を通じて感染拡大の要因を検討し、感染伝播を抑えることが重要である。
  • 現時点では、1例の確認をもってアウトブレイクを疑い対応していくことが望ましいと考える。
  • カンジダ・アウリスの感染症患者や保菌者から曝露を受けた可能性がある患者(接触者)に対しては、スクリーニング検査の実施が望ましい56)。過去のアウトブレイク事例では、同室で過ごした患者、同じユニット・病棟に入院していた患者、あるいは血圧計・体温計・パルスオキシメーターなどの医療器具を共有した患者を接触者としてスクリーニングしていた48, 57)。適切な検体採取部位と採取方法はまだ定まっていないが、米国では検体採取部位としては腋窩および鼠径部を1本のスワブで同時に採取する方法が一般的に用いられており57)、英国では鼻での検体採取も選択肢となっている48)。スクリーニング結果が判明するまでは、接触者に対して隔離またはコホーティングを原則とする接触予防策をすることが推奨されている58)。接触者の隔離解除に関しては議論が続いており、英国では少なくとも24時間以上の間隔をあけて3回連続で陰性が確認された場合に隔離解除が可能としている48)。本『手引き』としては、英国の基準を参考にしつつ、医療現場の実情や検査体制を踏まえ、柔軟な対応が望まれる。
  • 保菌が確認された患者については、退院時に患者家族や移動先の医療機関や施設に保菌の情報を確実に共有することが重要である31)
  • また、特定の物品や環境の介在が疑われた場合には、感染源や感染経路の推定に環境の培養検査が有効な場合がある31)
  • 現時点で、カンジダ・アウリスは日本国内よりも海外で感染が拡大しているため、『医療機関における海外からの高度薬剤耐性菌の持ち込み対策に関するガイダンス 第2版』59)などを参考にしながら、海外での入院歴がある患者の感染対策には特に注意することが大切である。

Ⅲ 市中での対応

      • カンジダ・アウリス感染症患者の同居家族については、家族自身が健康である場合に感染するリスクは低いと考えられており、適切に手指衛生(石鹸による手洗いまたはアルコールによる手指消毒)を保てば生活に問題はない。
      • カンジダ・アウリス感染創傷部のケアなど濃厚な接触の際にも、前後で手指衛生を保つことが重要で、その際は使い捨て手袋の着用も検討し、手袋を外した後は手指衛生を実施する31)

*カンジダ・アウリスによる感染事例の調査については管轄保健所に相談のこと。

報告対象と報告先

Ⅰ 報告対象

以下の症例を診断した、または疑った場合は、医療機関は最寄りの保健所にご相談いただき、管轄保健所においては、以下に記載の報告先までご報告いただきますようお願いいたします。(2025年1月30日に改正)25)

症例定義
①カンジダ・アウリス確定株もしくは疑い株を原因とした侵襲性真菌感染症(血流感染症、眼内炎、脳脊髄炎、関節炎、その他の播種性感染症など)の患者
②局所感染症(中耳炎・外耳道炎など)を呈する患者で、検体からカンジダ・アウリス確定株が分離・同定された患者

*報告基準については、今後、本真菌に関する国内の知見の集積に伴い、変更される可能性があります。

Ⅱ 報告先

      • 厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部感染症対策課
      • 国立健康管理研究機構 国立感染症研究所 感染症危機管理研究センター

*報告基準については、今後、本真菌に関する国内の知見の集積に伴い、変更される可能性があります。

相談先

1. 診断・検査・病原体について

国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 真菌部
 問い合わせ先:shinkin-kensa@nih.go.jp

2. 感染事例の実地疫学調査について

国立健康危機管理研究機構 国立感染症研究所 応用疫学研究センター
 問い合わせ先:q-fetp@nih.go.jp

3. 成人の治療・院内感染対策について

国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター 国際感染症センター
 問い合わせ先:idsupport@jihs.go.jp

4. 小児の治療・院内感染対策について

国立成育医療研究センター 国立成育医療研究センター 感染制御部 / 感染症科

執筆分担者

【カンジダ・アウリス 診療の手引き 第2.0版】

〔研究分担者〕
石金 正裕 国立国際医療センター 国際感染症センター 
〔研究協力者(五十音順)〕
青木 美樹 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース
赤澤 奈々 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース
阿部 雅広 国立感染症研究所 真菌部
梅山 隆    国立感染症研究所 真菌部
大宜見 力 国立成育医療研究センター 感染制御部/感染症科
大曲 貴夫 国立国際医療センター 国際感染症センター
黒須 一見 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター/応用疫学研究センター 
篠原 孝幸 国立感染症研究所 真菌部
庄司 健介 国立成育医療研究センター 感染制御部/感染症科/教育研修センター
菅井 基行 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター
高橋あずさ 国立感染症研究所 応用疫学研究センター 
立花 佳弘 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース
中下 愛実 昭和薬科大学 社会薬学研究室
永井 伯弥 国立感染症研究所 実地疫学専門家養成コース
永瀬裕一朗 国立国際医療センター 国際感染症センター
名木 稔  国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター
星野 泰隆 国立感染症研究所 真菌部
宮崎 義継 国立感染症研究所 真菌部
村長 保憲 国立感染症研究所 真菌部
山岸 拓也 国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター/応用疫学研究センター

文献
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令和7年度 厚生労働科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)JPMH23HA2006の助成を受けた研究班「AMR に関するアジア太平洋ワンヘルス・イニシアチブ(ASPIRE)の実行のための体制整備に資する研究」(研究代表者:国立感染症研究所 菅井基行,研究分担者:国立国際医療センター 石金正裕)

重要なお知らせ

「エムポックス 診療の手引き 第4.0版」ページを更新しました。

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「カンジダ・アウリス 診療の手引き 第2.0版」ページを更新しました

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「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の診療指針」ページを公開しました。

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これまでの実績

2025年2月
家族内淋菌感染の可能性
2025年1月
数十年前の日本国内でのサル咬傷後のBウイルス感染症の可能性
2025年1月
ブルセラ症の検査室曝露後対応
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