エムポックス 診療の手引き 第4.0版
病原体・疫学
Ⅰ 病原体
エムポックスは、オルソポックスウイルス属のモンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス:MPXV、以後、エムポックスウイルスと表記)による急性発疹性疾患であり、本邦では4類感染症に位置づけられている 1,2。1970年にヒトでの感染が確認されて以来、アフリカ中央部から西部にかけて発生報告があり、欧米でも常在地域からの渡航者などでの感染事例が散発的に報告されていたが、2022年5月以降は主に男性間での性的接触を行う男性(Men who have sex with men: MSM)を中心としたクレードIIエムポックスウイルスによるエムポックスの国際的な流行が発生した。さらに2023年以降はコンゴ民主共和国(DRC)でクレードIのエムポックスウイルスの流行が報告された。その後DRC東部を中心に家庭内感染、異性間の性交渉などによるクレードIbエムポックスウイルスの流行が発生し、周辺国への拡大が報告されるとともに、欧米やアジアでも流行地からの渡航者での感染例が報告された。
エムポックスウイルスには大きく分けてクレードI(旧称:コンゴ盆地系統群)とクレードII(旧称:西アフリカ系統群)の2種類のクレード(遺伝的系統群)がある。クレードIに分類される株の中でも、2023年にDRCの南キブ州カミトゥガで確認されたヒト症例から検出された株は、ゲノム解析の結果、これまで動物からヒトへの感染が主体と考えられていたDRC内での流行と異なり、ヒトの間で2023年以降に持続的に伝播していることが明らかとなったことから、クレードIの中で特にクレードIbというサブクレードに位置づけられた3。同様に、2022年以降世界的な流行を引き起こしたクレードIIのウイルスは、特にクレードIIbというサブクレードに位置づけられている4。それに伴い、旧来より報告されていた系統群はクレードIa、クレードIIaと新たなサブクレード名に位置づけられた。クレードI、クレードIIのそれぞれにおいて、サブクレード間での重症化や感染性に関するウイルス学的な違いは明らかではない。
クレードIによる感染例の致命率は10%程度であるのに対し、クレードⅡによる感染例の死亡例は1%程度と報告されていたが1,2、WHOや複数の研究報告によれば、クレードIa,Ibエムポックスウイルスのいずれにおいても、致命率は以前の報告よりも低いと報告されており、適切な支持療法を行うことで、致命率はさらに低下するとされる。
Ⅱ 伝播様式
エムポックスは、ヒトからヒトへの感染の場合、患者の皮膚病変や近接した対面での呼吸器飛沫への一定時間以上の曝露(prolonged face-to-face contact in close proximity)、患者が使用した寝具などの媒介物(fomite)により伝播することが知られている。2022年5月以降のクレードⅡエムポックスウイルス感染では、患者の皮膚病変のほか、血液、肛門、咽頭、尿などからエムポックスウイルスが検出され、特に皮膚病変、肛門からの検体がほかの部位と比較してウイルスDNA量が多いことが報告されていた5。また、発症19日後の患者の精液からエムポックスウイルスが分離された報告6や、発症54日後の精液からエムポックスウイルスのDNAが検出された報告などがあり、精液を介した感染の可能性が示唆されている一方で、77例から採取した検体で発症15日後の精液の99%でウイルス培養が陰性であったとの報告もあり7、精液中のウイルスの感染性を有する期間については不明である。その他の部位からも、発症40日後の穿破したリンパ節、54日後と76日後の唾液からエムポックスウイルスのDNAが検出された報告があるが、感染性は不明である8。
発症までの期間が潜伏期間より短いと推定される症例があることから、発症前のエムポックス患者から感染伝播する可能性が示唆されている9。
アフリカ地域以外の2022年5月以降のクレードⅡエムポックスウイルス感染では、症例の大半が成人(18歳以上が99%)かつ男性(性別が報告されている症例の97%)であった。性的行動を報告した症例のうち、大半が自らをMSMと認識していた(89%)。最も一般的な感染経路は性的接触によるもので、89%を占めた10。陰部病変を有するMSMにおける性的接触での伝播が示唆されており、性的な関係のネットワークで相互につながるコミュニティの一部にエムポックスが入った可能性があることが指摘されている11。また少数ながら、医療従事者の症例も例報告されているが、ほとんどは医療機関外での感染であった10。一方で、海外渡航歴はあるものの感染経路不明の小児例の報告12や小児の家庭内感染の報告13、保健医療従事者の接触(fomite)感染14、医療従事者の針刺し事故での感染の報告15、ピアスやタトゥーの施術施設で消毒が不十分な器具を介したと考えられる利用者間の感染伝播の報告16もあり、性的接触以外での感染についても注意が必要である。
2023年以降、DRCではクレードIaによるアウトブレイクが報告されている。感染要因は森林地域における動物由来スピルオーバーを起点として、家庭内の密接接触による限局的なヒト-ヒト伝播が主と理解され、罹患集団も15歳未満が中心とされてきたが、現在は年齢分布の多様化も起きている。
さらにクレードIbに関しては、成人の性的接触による感染伝播が主体であると報告されている。複数の州から性産業に関連した性的接触による感染伝播が報告されており、性産業を含む男女間の性的接触による感染が中心であり、そこから家庭内へ持ち込まれることで、小児の家庭内感染につながっていると考えられている17,18。キンシャサ特別州においてはクレードIaとクレードIb双方の持続的なヒト-ヒト感染が起こっており、いずれのクレードにおいても、成人での性的接触が中心であると報告されている19。このように女性の性的労働従事者を含む性的接触ネットワーク(MSMだけでなく男女異性間の性的接触を含む)や家庭内接触を介して周辺国およびアフリカ大陸域外へと拡大が起きている。
なお、詳細については、「2章I-3. 2024年の流行:クレードIaおよびクレードIb」を参照されたい。
Ⅲ 国内発生状況
エムポックスは、感染症法上で4類感染症に位置づけられており、患者もしくは無症状病原体保有者を診断した医師、感染死亡者及び感染死亡疑い者の死体を検案した医師は、ただちに最寄りの保健所への届出を行う必要がある。
2022年7月25日に、欧州でその後エムポックスと診断された者と接触した後、帰国後に発症した東京在住の成人男性が、エムポックスと診断された1。2023年以降も、患者の発生が続いており、296例の症例が確認されている(図1-1)1。
疫学情報が公開されている2025年11月11日時点で259例が届け出されている(図1-2)20。届出症例は女性が2例(2024年第14週・2025年第37週診断)で、残りはすべて男性であり、19都府県で届け出された。届出自治体別症例数の上位5自治体は、東京都192例、大阪府23例、神奈川県8例、千葉県6例、埼玉県・愛知県5例であった。これまでに届出時点の死亡例は確認されていないが、2023年9月に診断された症例1例の死亡が確認され、国内初の死亡例として、2023年12月13日に厚生労働省が公表した(表1-1)21。
届出症例の症状については、発疹が232例(89.6%)にみられ、発熱が184例(71.0%)、リンパ節腫脹及び局所リンパ節腫脹が92例(35.5%)でみられた。海外渡航歴のない症例が247例(95.4%)であり、特に2022年38週以降は海外渡航歴のない症例が主体である。
2025年11月11日時点で確認されている症例259例のうち、257例が男性であった。245例(94.6%)において推定・確定された感染経路として接触感染があったことが確認されている。また、191例(73.7%)において発症前21日間に性的接触があったことが把握された。海外における報告と同様に、国内においても男性同士の性的接触による感染伝播が中心となっていることが示唆される(表1-1)。
国内でゲノム解析が実施され、2025年11月18日までにGISAIDに登録された123検体のうち、クレードIIbが122検体、クレードIbが1検体であった22(GISAID、2025)。このうち、クレードIbが確認された症例については、2025年9月16日に神戸市および厚生労働省から国内初となるクレードIbによるエムポックス症例として公表された。当該症例はアフリカへの渡航歴があり、アフリカでの感染が想定されており、国内における感染の可能性は低いとしている23,24。
*その他、発生届が出されていない公表事例が1例あり.

( n=259)(2025 年 11 月 11 日集計時点)(感染症発生動向調査より)


Ⅳ 海外発生状況
2022年5月7日に、英国は、世界保健機関(WHO)にエムポックスの常在国であるナイジェリア渡航後のエムポックス患者の発生を報告した。以降、欧米を中心に、常在国への渡航歴や患者への接触歴のないエムポックス症例が報告され、2022年から2023年にかけて、欧州や米国など、これまで流行がみられなかった複数の国と地域で渡航歴がなくエムポックス患者との疫学的リンクの確認できない患者が複数報告され世界的な流行となった。この流行の主たるクレードは、クレードⅡで、MSMにおける性交渉時の皮膚・粘膜接触による感染事例が多く報告された。これらの事例を受け、WHOは、2022年7月21日にエムポックスに関する2回目の国際保健規則(IHR)緊急委員会を開催し、WHOは7月21日にIHRに基づく「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of International Concern:PHEIC)」に該当するか議論を行った。緊急委員会の意見をふまえ、7月23日にWHO事務局長は今回のエムポックスの流行が「エムポックスはPHEICである」と宣言した25。以降、WHO加盟国は協力しながら、対応を行った。2023年5月10日に開催された5回目のIHR緊急員会の意見を踏まえて、5月11日にWHO事務局長は今回のエムポックスの流行について、一部地域での報告が続いているものの、世界的に感染症が持続的に減少しており、過去3カ月間に報告された報告数は、前の3カ月間に比べてほぼ90%減少していること、疾患の重症度や臨床症状に変化がないことを確認できたことなどから、PHEICに該当しないと緊急事態の終了を宣言した26。そのうえで、事務局長は、世界的に減少傾向にある一方で、特定のコミュニティではウイルスの感染が続いていることを指摘した。さらに事務局長は、各国がサーベイランスと対応能力を維持し、将来のアウトブレイクに対処するために、既存の国家保健プログラムにエムポックスの予防とケアを統合し続けることの重要性を強調した26。また、2023年8月21日に、WHO事務局長からIHRに基づく恒常的勧告が発出された27。この「恒常的勧告」が発出されたのは初めてのことである。
全世界では2023年5月11日にPHEICの終了が宣言されたが、アフリカのコンゴ民主共和国で、これまで報告されていたクレードIとは異なるクレードIbによるエムポックスの流行が継続し、2023年に過去の最大の感染者数と死亡者数が報告された。クレードIIの主な感染経路はMSMにおける性交渉時の皮膚・粘膜接触であったが、コンゴ民主共和国国内では男女間及び同性間での性的接触、家庭内感染により感染が拡大していると報告された。2024年7月には、コンゴ民主共和国およびその周辺国への感染拡大を受けて、アフリカ疾病管理予防センターは8月13日に「アフリカ大陸安全保障上の公衆衛生上の緊急事態(Public Health Emergency of Continental Security; PHECS)」28に該当すると宣言した。さらにWHOは、2024年8月14日に今回のエムポックスの流行が「PHEIC」に該当すると宣言した29。その後DRCを中心とする流行国で報告数が減少傾向になったこと、クレードIに関する知見が集まり、適切な支持療法を行うことで致命率が低下させられること、クレードIIとの致命率の差が過去の報告よりも小さいことが明らかになった。これらを理由に、2025年9月4日の第5回緊急委員会を開催し、その審議結果を受け、9月5日に、今回のエムポックスの流行がPHEICに該当しなくなったことが宣言された19。
2025年12月31日時点で、WHOに加盟している常在国を含む127以上の国と地域から、2022年1月1日以降に診断された173,902例の確定症例(うち死亡477例)が報告されている。アフリカ地域では、2022年1月1日以降、35の加盟国からWHOに症例が報告されており、2026年1月25日現在、WHOには合計64,492件の確定症例(うち死亡272例)が報告されている。過去12カ月間(2026年1月25日現在)では、29カ国から40,215件の確定症例(うち185例)が報告されおり、過去12カ月間の症例の大半を占める3カ国は、コンゴ民主共和国(19,734例)、ウガンダ(6,301例)、シエラレオネ(5,432例)である10。
クレードIbによる感染例は、DRCでの感染拡大に伴い、周辺諸国でも感染事例が報告されている。2024年7月にはDRC東部に隣接するルワンダ、ウガンダ、ブルンジ、ケニアでそれぞれ初めてのエムポックス症例となった。2025年10月24日時点でアフリカ地域ではDRCを含む16カ国以上でクレードIbエムポックスウイルスの市中での伝播が確認されている。特に報告数が多いのが、DRC(36479例)、ウガンダ(8,248例)とブルンジ(4,623例)である10。
アフリカ地域外におけるクレードIbによる感染例については、2024年8月15日にスウェーデンの公衆衛生庁は、アフリカへの渡航歴のあるエムポックス症例1例を同国内で探知したと公表し、欧州疾病予防管理センター(ECDC)が本症例から検出されたウイルスがクレードIbエムポックスウイルスと報告した30。これは2023年のDRCを中心とした流行が始まって以降、アフリカ大陸以外から報告された初めてのクレードⅠエムポックスウイルス感染症例であった。これ以降、2026年1月27日時点で、アフリカ地域以外の31カ国からクレードⅠエムポックスウイルス感染症例がWHOへ報告されている。多くの症例はクレードIb感染症例であるが、アイルランド、中国、トルコからクレードIa感染症例が報告されている10。
このうち、中国やタイ、ネパールなどからは中東諸国への渡航歴はあるものの、アフリカへの渡航歴のない感染症例が報告されているほか、2025年10月24日時点で、米国、スペイン、ポルトガル、オランダ、マレーシアから流行国への渡航歴のないクレードIb感染症例が報告されている31。欧米諸国で報告された患者の行動歴から、クレードIIbによるエムポックスと同様、男性間で性交渉を行う者(MSM:Men who have sex with men)間の性的接触による感染伝播が示唆されている32。2025年10月24日時点でアフリカ地域外の国において、エムポックスの死亡例は報告されていない10。
また、WHOの報告によると、エムポックスウイルスの異なる系統である「クレードIb」と「クレードIIb」の遺伝的要素を併せもつ、新たな「組換え株(recombinant)」の症例が世界で初めて2件確認された。1例目は東南アジアへの渡航歴がある英国の患者(2025年10月)、2例目はアラビア半島への渡航歴があるインドの患者から検出された(2025年9月に発症し、初期はクレードIIbと判定されたが、後に2025年12月に組換え株として細分類)。両者が数週間の間隔を置いて同一の組換え株に感染していた事実は、水面下でさらに症例が広がっている可能性を示唆しているが、現時点では、この組換え株による重症化や致命率の上昇は報告されておらず、臨床症状も従来の株と同様であるため、WHOは公衆衛生リスク評価の変更は行っていない。ウイルスの変異を監視するために、ゲノム解析や監視体制の強化を継続する必要がある33。
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臨床像・合併症
Ⅰ.臨床像・合併症
1.2022年の流行以前:クレードⅠとクレードIIa
モンキーポックスウイルス(別名 エムポックスウイルス:MPXV、以後エムポックスウイルスと表記)はゲノム解析によりクレードⅠ(コンゴ盆地系統群)とクレードII(西アフリカ系統群)の2つのクレードに分類される。2022年5月の流行以前、アフリカ中央部から西部にかけて限局的に流行していたウイルスは主にクレードⅠとクレードIIaである1。致命率はクレードIが5~10%、クレードIIaは1%とクレードIの方が高い1。またいずれのクレードによる感染も、患者からのヒト-ヒト感染は家庭内での密接な接触による家族や子どもへの伝播であった1。
エムポックスは6~13日(最大5~21日)の潜伏期を経て発症し、発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの前駆症状が1~5日程度持続する。前駆症状発症から3日以内に皮疹が顔面から始まり体幹、四肢へ遠心性・全身性に拡大する2。天然痘や水痘では、リンパ節腫脹を伴わないので鑑別に有用とされる。
皮疹の好発部位は顔面が最多で、体幹および上肢や掌、下肢、足底、口腔粘膜が多い3-6。掌、足底の皮疹は、水痘では通常見られないため鑑別の上で有用である。典型的には丘疹、小水疱、膿疱、紅斑、痂皮、潰瘍など多種の皮疹が出現する3-6。皮疹は紅斑→丘疹→小水疱→膿疱→結痂→落屑と段階が移行し、皮疹の時相が一致していることが特徴である1,3-6。発症から2~4週間で治癒する。合併症は皮膚軟部組織の二次性細菌感染、肺炎、嘔吐・下痢に伴う脱水、結膜炎や角膜潰瘍などの眼病変5,7,8がある。稀な合併症として脳炎9や咽後膿瘍10などが報告されている。
2.2022年の流行:クレードIIb
クレードIIbによる流行は2017年にナイジェリアで報告された。この流行ではその年までの最大の患者数が報告され、ほとんどの症例が都市部で検出された。2018年から2021年にカメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、コンゴ、シエラレオネの都市部で患者数が大幅に増加した。また、ナイジェリアで感染し、英国11、イスラエル12、シンガポール13、米国14で輸入症例が報告されたのもこの時期である。そして2022年に流行したエムポックスウイルスも、ナイジェリアのクレードIIbに由来するウイルスである。ヒト-ヒト感染を起こしやすいウイルスが皮膚の密接な接触である性交渉で伝播し、性的接触の機会が多いMSMコミュニティに入り込んだこと、国際的なヒトの往来が容易になっていたことが世界規模の流行になった理由である15。
この流行では、潜伏期が7~10日1、前駆症状を伴わない例が1割程度報告されている16,17。男性同士の性的接触が主な感染経路であることから肛門・直腸、口腔周囲の皮膚病変の割合が増え17,18、皮疹の数がそれほど多くない(中央値10個)1、時相の異なる皮疹が混在することも特徴的である17,19。図2-1に患者の皮疹を示す。また、皮疹を伴わず粘膜症状(直腸炎による肛門痛、テネスムスや咽頭炎による咽頭痛、嚥下時痛)を呈する患者も報告されている1。
この流行における頻度の多い合併症として蜂窩織炎、直腸炎、陰茎浮腫、扁桃腺炎・咽頭炎などが報告されている18,20,21。頻度は低いものの、注意が必要な病態としてウイルス性肺炎22、ウイルス性心筋炎23、角膜炎・結膜炎24、関節炎・骨髄炎25,26、播種性病変27、脳炎・脊髄炎28,29が報告されている。2022年5月以降の流行では性的接触による感染が多く、HIV、梅毒、淋菌、クラミジアなどの性感染症の合併例が報告されている18。

3.2024年の流行:クレードIaおよびクレードIb
2023年以降、コンゴ民主共和国ではクレードⅠによる患者増加が続き、2023~2024年には複数のアウトブレイクが並行して報告された。従来のクレードⅠ(現在はクレードIaというサブクレードとして位置づけられる)感染は、森林地域における動物由来スピルオーバーを起点として、家庭内の密接接触による限局的なヒト-ヒト伝播が主と理解され、罹患集団も15歳未満が中心とされてきた。しかし近年の流行では、クレードIaのエンデミックな流行地域においても、年齢分布が多様化しており、従来、動物由来感染が少なかった地域で成人の症例が増加する状況が報告されている30。
この流行の中で、コンゴ民主共和国東部およびアフリカ大陸内周辺国を中心に、クレードIb(クレードⅠ内の新規サブクレード)が持続的なヒト-ヒト感染を起こしていることが明らかとなり31、流行初期から性的接触が主要な伝播要因として示され、女性の性的労働従事者を含む性的接触ネットワーク(MSMだけでなく男女異性間の性的接触を含む)や家庭内接触を介して周辺国およびアフリカ大陸域外へと拡大している32。
WHOは本事象を受けて2024年8月14日にPHEICを宣言し、その後2025年9月5日にPHEICは解除されたが、クレードIbの国際拡大リスクは継続して注視されている30,32。現在では、キンシャサなど都市部ではクレードIaとクレードIbが同時に検出され、分子疫学的にも持続的なヒト-ヒト感染を示唆する所見が議論されている30,32。
アフリカ域外での発生については、継続的な拡散が認められている。2025年9月には日本でもクレードIbが初検出(アフリカ渡航歴のある成人女性)され33、2026年2月19日時点で52カ国から報告されている30。さらに、渡航歴のないクレードIb症例が、イタリア、マレーシア、オランダ、ポルトガル、スペイン、米国などで報告され34、特にスペイン、フランス、ポルトガルではクレードIbのコミュニティ内伝播が持続的に発生している30。一方、クレードIaのアフリカ域外では、中国、アイルランド、トルコから渡航歴のある感染例として報告があるのみで、現時点で域外での確定報告は限定的である30。
ヒト-ヒト感染経路の様式も明らかになってきた。ヒト-ヒト感染は、①性的接触ネットワーク内の高効率・迅速な伝播と、②家庭内の非性的接触による相対的に低効率・緩徐な伝播の2様式で持続的ヒト-ヒト感染が生じている30。コンゴ民主共和国のクレードIb感染では、発症間隔(serial interval: SI)は性的接触による伝播で非性的接触より約4日短く、性的接触では感染がより迅速に拡大しうることが示されている35。さらに、ブルンジのクレードIb前向き家庭内コホートでは、二次感染率(secondary attack rate: SAR)は6.15%、基本再生産数(basic reproduction number :R0)は0.30と推定され、家庭内の非性的接触のみでは伝播が限定的で流行維持が困難であることが示唆されている36。同様に、コンゴ民主共和国のクレードIaの接触追跡研究でも同様の傾向が示されている。したがって、クレードIa/Ibいずれにおいても、感染拡大には性的接触パターンが重要な増幅要因となることが示唆されている37。
臨床像については、性的接触パターンによる成人感染が主要な感染経路となり、2022年以前の感染例と比較して、皮疹分布などにも変化がみられる。クレードIbの性的接触感染例で性器病変(小水疱・膿疱)を起点として全身へ拡大することが報告されている32。クレードIbの前向き観察コホート研究によると、前駆症状を伴う例が多く(88%)、皮膚病変(97%)に加えて粘膜病変(82%)やリンパ節腫脹(73%)を高頻度に認める38。成人では性器病変が主要な部位であり(89%)、病変密度も性器周辺で最も高いことは、性的接触による伝播と整合している38。一方、小児では性器病変は相対的に少なく(42%)、より均一な全身性皮疹として呈する38。同コホートの合併症は、泌尿生殖器系(57%)および皮膚合併症(41%)が多く、妊娠例では不良な妊娠転帰が報告された38。胎盤感染を伴う垂直感染により、流産、子宮内胎児死亡、先天感染が生じ得ることが示されている39。クレードIaでも、性的接触での感染が疑われた成人症例で同様の病態を呈しうる40。
致命率(Case Fatality Rate; CFR)については、クレードIaでは歴史的にCFR 1.4~11%と高い一方32,38、クレードIbの入院コホートではCFRは1%未満で、死亡は5歳未満に集中した38。近年は医療アクセスや検査体制の違いによる影響が大きく、単純比較は困難であるとの指摘もある32。現時点では、より重症度の高いクレードIaであっても支持療法が得られる環境でCFR 1.4~1.7%程度との報告がある32。ただし、基礎疾患(HIVなど)、栄養状態、医療アクセス、症例定義や報告バイアスによりCFRは大きく変動し得る点に留意する必要がある32。

4.長期的な後遺症(Post-acute Mpox Sequele)
1)クレードIIb
2022年以降のクレードIIb流行では、病変が性器・肛門直腸周辺に集中しやすく、治癒後も同部位を中心に外観変化(瘢痕・色素沈着)や機能障害が残存し得る。米国2都市の前向きコホートにおける診断後11~18カ月後時点では、56%は外観に影響する後遺症が報告されている41。内訳として、持続する色素沈着が83%、瘢痕が51%にみられた。機能的後遺症は13%にみられ、肛門直腸症状、尿路症状が中心で、少数ながら神経障害、慢性疼痛、視力障害、易疲労、体重減少も報告された41。さらに社会生活への影響、性的活動への影響、就労への影響、抑うつ症状なども報告されている41。
2)クレードⅠ
現行のクレードIaを主とする古典的報告に限られるが、皮疹の治癒後に顔面を中心とした陥凹性瘢痕が最も一般的な後遺症として記載されている。二次性細菌感染がない場合は浅い瘢痕で消退しうる。より重篤な後遺症として、眼病変に伴う視力障害が主で、角膜混濁による視力低下および社会的失明が報告されている42。また、変形を伴う瘢痕、瘢痕性ケロイド、部分的脱毛なども報告されている42。近年の流行による後遺症については、今後の報告を待つ必要がある。
Ⅱ.HIV合併例
クレードIIbによる感染における、HIV未治療でCD4陽性リンパ球数(CD4数)が低値の合併例では、前述I-2.に記載の症状が長引き、播種性病変をきたす可能性がある。CD4数350/µL未満のHIV合併エムポックス症例382名における19カ国にまたがる検討では、死亡症例は全てCD4数200/µL未満であり、致命率はCD4数100~200/µLで4%(94例中4例)、CD4数100/µL未満で27%(85例中23例)であった。予後はCD4数のみでなく血中ウイルス量(VL: Viral load)とも強く関連しており、CD4数100/µL未満でVLのデータが得られている74例の致命率は、VL50コピー/mL未満で7%(14例中1名)であった一方で、VL10,000コピー/mL以上では30%(47例中14名)と大きく異なっていた22。
重症例の症状は多岐にわたり、CD4数100/µL未満では、CD4数300/µL超の症例と比較して、広範な壊死性皮膚病変(54% vs 7%)、細菌感染(44% vs 9%)、結膜炎などの眼病変(15% vs 1%)、肺病変(29% vs 0%)、肺結節(9% vs 0%)などの合併症の頻度が高い。未治療でCD4数200/µL未満のHIV合併例は、重症化ハイリスク例と考えられ、エムポックス診断時のHIV感染症合併の有無の検索と陽性時のCD4数の評価が重要である。抗HIV療法によりウイルスコントロールが良好な例においては、非HIV合併症例と同様、重症化は稀であると考えられる。
また、抗HIV療法(Antiretroviral therapy:ART)による免疫状態の改善により、症状が悪化する免疫再構築症候群(Immune Reconstitution Inflammatory Syndrome:IRIS)が、HIV合併例の予後に影響することが明らかになっており、前述の報告では、382例中85例(22%)でARTが開始・再開され、このうち21例(25%)がIRISが疑われる症状の増悪を認め〔(CD4数100/µL未満で38%(40例中15例)、CD4数100~200/µLで26%(23例中6例)〕、その半数以上の12例(57%)が死亡している。
HIV患者で、肛門や性器周囲に発疹や潰瘍性病変を認める場合は、常に本症の可能性を念頭におくことが重要である。重度免疫不全例での本症の致命率はきわめて高いため、可能性を完全に除外できない場合には、積極的にエムポックスの診断のための検査を行うことが救命につながる。
クレードIによるエムポックス感染では、重症化および致命率はクレードIIより高いと従来より考えられているが、HIV感染合併例でのエビデンスは十分ではない。
Ⅲ.エムポックスの病態
前述のように、大半の症例において、エムポックスは基本的に時間の経過とともに自然治癒する疾患である。重症例や重症化ハイリスク例は重篤な状態となる可能性がある。特に免疫不全患者においては死亡例も報告されているため、重症例と重症化ハイリスク例は早期に治療介入することが推奨されている43,44。このように、患者背景や基礎疾患によりエムポックスの臨床像は大きく異なる。
病態進展にはウイルスの直接的な組織侵襲のみならず宿主免疫応答が関与しており、免疫不全状態ではウイルスが増殖・拡散しやすく、逆に免疫再構築時には過剰な炎症反応が重篤化の一因となり得る可能性がある45。軽症例では宿主の抗ウイルス免疫、とりわけTh1型細胞性免疫が適切に機能することで重篤化を防いでいると考えられる。一方で重症例ではウイルスが全身播種し、高度の炎症反応や臓器障害を引き起こす46。コントロール不良のHIV感染症などのハイリスク群では、宿主の免疫応答が不十分なためウイルス増殖を制御できず、感染が全身に播種して重篤化する可能性がある47。また、クレードⅠウイルスは宿主細胞内での複製能力や免疫逃避能力が高く、より侵襲的な感染に寄与するとされる48。
Ⅳ.無症状病原体保有者
クレードIIb無症状病原体保有者の存在が欧米各国の研究において報告されている。これらの研究では、淋菌・クラミジア検査用の直腸ぬぐい検体や咽頭ぬぐい・尿・直腸ぬぐい検体の混合検体などの残検体が用いられ、流行状況により1.3~6.5%程度のエムポックス陽性率が報告されている49,50。無症状病原体保有者の中には、症状が軽微かその症状をエムポックスと認識していない(unrecognized)状態や、何らかの理由で診断に至っていない(undiagnosed)状態が混在していることも考えられる。東京近郊で2023年1~3月に実施された無症状のMSMにおける研究では、1,346名のうち5名(0.4%)が陽性となり、うち3名が研究期間中無症状のままであった。同期間において、研究参加後に4名が後日症状を発症し新たにエムポックスと診断されており、無症状者3名に対し有症状者は6名であった。無症状病原体保有者の診断は、検査のタイミングに左右される一方、有症状者は比較的捕捉されやすいことを考慮すると、無症状または認識されない病原体保有者が一定数存在することが示唆される51。
無症状病原体保有者の感染性は不明だが、無症状病原体保有者より検出されたエムポックスウイルスDNAの複製能力が確認されており49、本人が感染を自覚せずに他者に感染させている症例は存在すると考えられる。無症状病原体保有者においては、診断時より21日間は性交渉を控え、それ以降12週間はコンドームを使用する。診断後に症状が出現した場合の性行為に関しては、「5章Ⅲ-3隔離が終了した時」に準じる。
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診療の実際と診断・届出
Ⅰエムポックス診療の実際
1.診療の留意点
エムポックスの診療での主な留意点として、以下の4点をあげる。
- ①皮疹の性状や分布、全身症状、海外渡航歴、sick contactの有無からエムポックスを疑う。2023年以降、コンゴ民主共和国を中心にクレードIa/Ibエムポックスウイルスの感染が拡大し、欧米やアジアでも流行地からの渡航者で感染例が報告されている1。そのため、流行地への渡航歴聴取も重要である。
- ②2022年以降のクレードIIbエムポックスウイルス流行では古典的な経過を取らない症例がある。
- ③診療経験が乏しいうちは、エムポックスを疑うことができないかもしれない。そのため、の疾患と臨床診断し治療を行ったが、改善しない症例に遭遇する(例:性器ヘルペスと診断して治療したが皮疹が改善しない)。このような場合に、エムポックスを鑑別診断にあげる必要がある。
- ④他の性感染症と重複感染が報告されているため、他の性感染症の確定診断がついたとしても、エムポックスの合併を疑う必要がある。
2.病歴聴取、身体診察のポイント
エムポックスを疑うポイントは、①皮疹の性状、②皮疹の分布、③皮疹以外の症状、④sick
contactの有無、⑤流行地域への渡航歴である2,3。①~⑤をもとに鑑別診断をあげる。
1)皮疹の性状
エムポックスの古典的な皮疹は、紅斑→丘疹→小水疱→膿疱→結痂→落屑とステージが順次移行する。加えて、臨床経過のある一時点において、同一ステージの皮疹を呈すると報告されている。この点は、異なるステージの皮疹が混在する水痘との鑑別点である。クレードIIbエムポックスウイルスでは、水痘のように異なるステージの皮疹が同時にみられることもあり、留意が必要である。
2)皮疹の分布
皮疹は、顔面から始まり体幹部へと拡大し、全身の皮疹を呈する。しかし、クレードIIbエムポックスウイルスでは、皮疹の分布が従来の報告とは異なる場合がある。具体的には病変が会陰部・肛門周囲や口腔などの局所に集中・限局しており、顔面から体幹部へと移行していく経過が追えない症例も存在する。
3)皮疹以外の症状
皮疹の出現前に発熱、頭痛、リンパ節腫脹などの全身症状が先行する。クレードIbエムポックスウイルスでは、全身症状がより強く表れ、ウイルス性肺炎や二次細菌感染症からの敗血症、脳炎や角膜炎といった合併症が起こり致命率も高い4,5。一方、クレードIIbエムポックスウイルスでは、限局した皮疹のみで全身症状を伴わない事例が報告されている。また、肛門直腸病変による肛門痛、テネスムス、血便や、陰茎・尿道病変により排尿困難をきたした事例の報告がある。
4)sick contactの有無
クレードIIbエムポックスウイルスは、MSM(Men who have Sex with Men)の間で流行した。性交渉時の皮膚・粘膜接触による感染事例が多かった。クレードIa/IbエムポックスウイルスではMSM間における感染以外に、異性間の性交渉、家庭内感染により感染が拡大している。性交渉を含めたsick contactについて聴取が必要である。
5)流行地域への渡航歴
鑑別診断を進める上で、流行地域への渡航歴は重要な病歴となる。クレードⅠエムポックスウイルスは中央アフリカで流行がある。特に、2023年以降、コンゴ民主共和国においてクレードIa/Ibエムポックスウイルスの流行が続いている2。
3.鑑別診断
鑑別疾患は多岐にわたる。診療する際は、エムポックス以外の疾患の季節性や流行状況も念頭にいれ鑑別診断を行う必要がある。それぞれの疾患の特徴は成書を参照されたい。
1)全身の発疹を呈する場合
エムポックスとの重要な鑑別疾患は、疾患の頻度が多い水痘、梅毒、手足口病、カポジ水痘様発疹症などである。
2)性器・肛門周辺のみの皮膚病変の場合
性器ヘルペス、梅毒、帯状疱疹、毛嚢炎、伝染性軟属腫などが鑑別診断にあがる。
3)直腸炎を呈する場合
淋菌、クラミジア、梅毒、性器ヘルペス、赤痢アメーバ症などの性感染症に加え、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)が鑑別診断にあがる。
Ⅱ 診断・届出
エムポックスの診断を行うためには、各都道府県等の地方衛生研究所における行政検査又は承認された体外診断用医薬品を用いた検査による確定検査を実施する必要がある。
また、令和8年3月に、保健所等におけるエムポックスのスクリーニング検査事業の円滑な実施を目的として「保健所等におけるエムポックス検査のガイドライン(令和8年3月版)」6が発出され、一部の自治体では感染の早期探知および医療機関との連携を図る観点から、スクリーニング検査事業が実施されている場合がある。
1.検査方法
確定診断には行政検査又は承認された体外診断用医薬品を用いた検査による確定診断(PCR検査)が必要である。
検体採取方法は、水疱内容液や水疱蓋などの病変部を採取し、水疱が保たれている場合は、水疱内容液を注射器で吸引し採取、水疱が自壊している場合は、水疱内容液および自壊組織をスワブでぬぐい、痂皮となっている場合は、ピンセットで痂皮を採取し、それぞれスクリューキャップのチューブに入れる。詳細については『病原体検出マニュアル エムポックスウイルス』(第4版(2023年6月国立感染症研究所)を参照されたい7。
疫学的用途などで無症状者に対して検査を実施する場合は、直腸ぬぐい検体や咽頭スワブ、または、うがい液、尿、血液、これらの混合検体などが使用されることがあるが、検出感度は低下する8,9。これらの採取方法は通常の方法に則り採取する。
2.診断、届出の流れ
エムポックスは感染症法における4類感染症に位置づけられており、診断した医師は最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に対して直ちに届出を行うことが義務づけられている。エムポックスを疑う症状が見られた場合の対応については、「エムポックスに関する情報提供及び協力依頼について」〔令和4年5月20日付け厚生労働省健康局結核感染症課事務連絡(令和7年12月8日最終改正)〕10に示されている。診断、届出の流れを図3-1に示す。

【暫定症例定義】
1)疑い例
原則、下記①~②すべてを満たす者とする
(臨床的にエムポックスを疑うに足るとして主治医が判断した場合についてはこの限りではない)
①少なくとも次の1つ以上の症候を呈している。
- 説明困難*な急性発疹(皮疹または粘膜疹)
- 発熱(38.5℃以上)
- 頭痛
- 背中の痛み
- 重度の脱力感
- リンパ節腫脹
- 筋肉痛
- 倦怠感
- 咽頭痛
- 肛門直腸痛
- その他の皮膚粘膜病変
*水痘、風しん、梅毒、伝染性軟属腫、アレルギー反応、その他の急性発疹および皮膚病変を呈する疾患によるものとして説明が困難であることをいう。ただし、これらの疾患が検査により否定されていることは必須ではない。
②次のいずれかに該当する。
- 発症21日以内に複数または不特定の者と性的接触があった。
- 発症21日以内にエムポックスの患者,無症状病原体保有者または①を満たす者との接触(表3-1レベル中以上)があった。
- 臨床的、疫学的(流行地域への渡航歴がある等)にエムポックスを疑うに足るとして主治医が判断をした。
2)接触者
エムポックス患者(確定例)または疑い例と以下の表3-1に示す接触状況があったものをいう。

【診断(行政検査による方法)】
- ①エムポックス疑い例に該当する患者を診察
- ②疑い例の探知について、最寄りの保健所に相談。
- ③保健所の指示等を踏まえ、表3-3で示す検査材料について病原体検出マニュアルを参照の上、検体を採取し、保健所へ検体を提出(残余検体については、保健所から求めがある場合に備え、結果判明まで保管しておくことが望ましい)。
- ④行政検査においてエムポックス陽性と判明した場合は、感染症法に基づき、届出。
【診断(体外診断用医薬品を用いた方法)】
- ①エムポックス疑い例に該当する患者を診察
- ②疑い例について、表3-3で示す検査材料について病原体検出マニュアルを参照の上、検体を採取し、承認された体外診断用医薬品を用いて検査(残余検体については、保健所から求めがある場合に備え、検査結果が保健所に受理されるまで保管しておくことが望ましい)。
- ③体外診断用医薬品を用いてエムポックス陽性と判明した場合は、感染症法に基づき、届出。
【届 出】
エムポックスは感染症法上4類感染症に位置づけられおり、感染症法第12条第1項に基づき、エムポックスと診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届出なければならない。エムポックスの届出基準による届出対象は、以下のとおりである10,11。
患者(確定例)
以下の表3-2の臨床的特徴を有する者を診察した結果、症状や所見からエムポックスが疑われ、かつ、表3-3の検査方法により、エムポックス患者と診断した場合。
無症状病原体保有者
診察した者が以下の臨床的特徴を呈していないが、表3-3の検査方法により、エムポックスの無症状
病原体保有者と診断した場合。
感染症死亡者の死体
以下の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エムポックスが疑われ、かつ、以
下の表3-3の検査方法により、エムポックスにより死亡したと判断した場合。
感染症死亡疑い者の死体
表3-2の臨床的特徴を有する死体を検案した結果、症状や所見から、エムポックスにより死亡したと
疑われる場合。


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治療
Ⅰ 治療の基本
エムポックスは大半の症例において、時間の経過とともに自然治癒する疾患である。このため、治療の基本は支持療法と疼痛コントロールである。しかし、免疫不全の患者、小児、妊婦などの重症化ハイリスク例は重篤な状態となる可能性があり、重症例と重症化ハイリスク例は早期に治療介入することが推奨されている1,2。
1.重症例と重症化ハイリスク例の対応
2022年に米国疾病予防管理センター(CDC)では、エムポックスの病態を、軽症例、重症例、重症化ハイリスク例の3つに分類し、重症例や重症化ハイリスク例に対してテコビリマトの使用を推奨していた3。しかし、STOMP試験(主にクレードIIb)4やPALM007試験(クレードⅠ)5において、テコビリマトの安全性は証明されたが、プラセボ群と比較してテコビリマト投与群で病変消失までの時間は短縮されず、明確な有効性は示されなかった6。この結果を受けて、2024年12月にCDCはテコビリマトcompassionate useの対象者を表4-1の1~3の背景を有するエムポックス患者に限定した7。テコビリマトに加えて、シドフォビルもしくはブリンシドフォビル、ワクシニア免疫グロブリン(Vaccinia Immune globulin:VIG)の併用を考慮するよう推奨している8。また、眼病変を伴う重症例に対しては、角結膜炎や角膜病変による視力障害を防ぐ目的で、トリフルリジン点眼薬を併用した症例報告がある9。
2.HIV合併例と免疫再構築(IRIS)の対応
表4-1にあるように、HIV感染者でCD4陽性リンパ球数(CD4数)が200/µL未満の患者は重度の免疫不全状態であり、播種性病変をきたす可能性がある。このような患者の抗HIV療法(Antiretroviral therapy:ART)については、可能な限り早期に開始すべきである10。未治療のHIV合併症例におけるART開始に伴うIRIS発生時の対応に関して、現時点で明確なエビデンスは存在しない。HIV合併例で重症化のリスクが特に高いCD4数100/µL未満の症例では、エムポックス以外の日和見感染症が合併している可能性も高く、IRISが疑われる際には、その他の病原体の検索も重要である11,12。特に、直腸などの腸管に病変が存在した患者で、IRISを契機に死亡したと思われる症例が報告されている。IRISによる腸管病変の増悪による菌血症や腸管穿孔、イレウスなどが考慮されるが、CD4数が低値の場合、サイトメガロウイルス感染による腸管病変も合併している可能性が高く、症状増悪の原因病原体が単一ではない可能性も考慮に入れる必要がある12。

IRIS発症時に使用されるステロイドの役割についても、エムポックスに関しては現時点ではエビデンスはない。ステロイドがエムポックス自体の増悪に影響する可能性もあり、今後のエビデンスが待たれる。
Ⅱ 日本におけるエムポックス患者に対する治
療提供体制
2022年7月以降、全国7医療機関(市立札幌病院、東北大学病院、国立国際医療センター、
藤田医科大学病院、りんくう総合医療センター、福岡東医療センター、琉球大学病院)において、エムポックス患者に対する治療提供体制を構築し、体制を維持している。具体的には、2026年1月時点で下記3つの特定臨床研究が実施されている。
【特定臨床研究・1】
エムポックス及び天然痘入院患者を対象とした治療法の安全性及び有効性を評価する多施
設共同プラットフォーム サブプロトコル 01:テコビリマット
治療薬として輸入されたテコビリマトを、国立国際医療センターを含む全国7医療機関において投与できる体制を構築した。具体的には、特定臨床研究「エムポックスと天然痘に対する経口テコビリマット治療の有効性および安全性を検討する多施設共同非盲検二群間比較試験」を立ち上げ(jRCTs031220169:2022年6月28日公開)、同薬剤による治療が提供できる体制を整備した13。2022年7月26日より患者登録を開始しており、2024年12月までの累計登録患者数は31例である。なお、2024年12月にテコビリマトは薬事承認されたが14、2026年1月時点では一般流通しておらず、特定臨床研究は継続となっている。
【特定臨床研究・2】
エムポックス及び天然痘入院患者を対象とした治療法の安全性及び有効性を評価する
多施設共同プラットフォーム サブプロトコル 02:ワクシニア免疫グロブリン静注製剤
米国では重症化リスクのあるエムポックス患者の難治例や死亡例が報告されており、テコビリマト投与に加え、ステロイドパルス療法、VIG、血漿交換などが行われている。CDCは、2022年10月13日にエムポックスを含むオルソポックスウイルス感染症に対するVIGの使用を治験薬の拡大アクセス事業(Expanded Access IND Program)で承認した15。また、オーストラリアではテコビリマトとVIGを治療選択肢として使用できる診療体制を整えた16。このような背景を受け、本邦でもエムポックスに対するVIGの有効性と安全性を検証し、同薬剤を使用できる体制を整えるため、特定臨床研究「エムポックスと天然痘に対するワクシニア免疫グロブリンの有効性および安全性を検討する多施設共同単群試験」を立ち上げ、全国7医療機関においてVIGを使用できる体制を構築した(jRCTs031220744:2023年3月30日公開)17。2023年9月6日より患者登録を開始しており、2024年12月までの累計登録患者数は2例である。
【特定臨床研究・3】
エムポックス及び天然痘入院患者を対象とした治療法の安全性及び有効性を評価する
多施設共同プラットフォーム サブプロトコル 03:シドフォビル
エムポックスに関して重症化は稀とされてきたが、今般の国際的な流行における、未治療HIV感染症者などの免疫不全を有するハイリスク群において、致死的な経過をたどるリスクが認識されつつある。流行が先行した欧米では、テコビリマトと他薬剤の併用療法が提案されており、その中にシドフォビルが含まれる。一方で、シドフォビルのエムポックスに対する臨床的有効性は確認されていない。したがって、本邦において同薬剤の有効性と安全性を検討するため、特定臨床研究「エムポックスに対するシドフォビル、経口プロベネシド併用療法の有効性および安全性を検討する単施設単群試験」として国立国際医療研究センターで立ち上げた(jRCTs031230652:2024年2月22日公開)18。
全身投与薬剤を用いた上記特定臨床研究1~3は、下記の通りプラットフォーム試験化を行った。「エムポックス及び天然痘入院患者を対象とした治療法の安全性及び有効性を評価する多施設共同プラットフォーム」サブ01:テコビリマット、サブ02:ワクシニア免疫グロブリン静注製剤については2024年5月27日にjRCT公開した(サブ01:jRCTs03124011019、サブ02:jRCTs03124011120)。サブ03:シドフォビルについては多施設共同研究として2025年2月3日にjRCT公開した(jRCTs03124065821)。
Ⅲ 合併症のマネジメント
1.疼痛コントロール
2022年5月以降の流行における入院の主な理由の一つは、咽喉頭または肛門・直腸病変の疼痛である22。疼痛の程度としてはNumerical Rating Scaleでscore 7~8の疼痛を訴えることが多い。アセトアミノフェンやNSAIDs、プレガバリン、ガバペンチンなどの鎮痛薬の内服のほかリドカイン軟膏の局所塗布が有効とされるが23、オピオイド点滴による鎮痛を要する場合もある24。肛門ヘルペスも同様に肛門会陰部の皮疹、疼痛を呈することがあるので、性的接触がエムポックス感染の契機となっている場合には単純ヘルペスウイルスの重複感染に注意する。
2.皮膚軟部組織の合併症
エムポックスによる皮疹の増悪により、皮膚軟部組織の二次性細菌感染が生じうる。クレードIaでは皮疹が全身性に分布し、かつ90%以上の症例で皮疹が100カ所を超えると報告されている25。HIV合併感染例では皮疹が全身に播種した症例のほか、壊死・出血を伴う皮疹例で蜂窩織炎、皮下膿瘍、続発する菌血症などが報告されている11。皮膚の発赤、熱感、腫脹を伴う場合は皮膚軟部組織感染症の合併を考慮し抗菌薬治療を行う。
3.消化器の合併症
2022年、クレードIIbによる流行では、特に直腸炎の合併が多く、メタアナリシスによればエムポックス症例の11%が直腸炎を合併している26。これは同性間性交渉を行う男性において、肛門性交によりエムポックスウイルスが直腸粘膜に直接侵入・進展することが原因と考えられている27。上述の肛門痛のほか、排便困難、出血を呈することがあり、排便時痛が強い場合は緩下剤の併用や腸管安静を行う。診断のために大腸内視鏡検査を検討する。また、直腸穿孔28や肛門周囲膿瘍29などの外科的治療介入を要する合併症も報告されているので、症状が強い場合にはCTやMRI画像検査などを検討する。
クレードIではクレードIIに比べ消化器症状が強く、下痢の頻度は同程度であるものの前者では嘔気・嘔吐、腹痛の頻度が高い30。流行地域では脱水と栄養失調が小児の致命率を増大させる要因となっている。点滴による脱水補正を積極的に行う。
4.腎・泌尿器の合併症
腎障害の頻度を見るとエムポックス528例のうち2例31、腎移植10例を含む固形臓器移植後のエムポックス11例のうち1例32であり、急性腎障害は稀な合併症と言える。男性では陰茎浮腫による嵌頓包茎、排尿障害が約10%の患者に生じうる33。嵌頓包茎は用手的包皮反転で改善が得られることが多い22。性感染症として尿道炎が7.7%で合併する34ほか、早期顕性梅毒に似た無痛性の陰茎潰瘍と両側鼠径リンパ節腫脹の報告35があるので、排尿に伴う症状がある場合は淋菌、クラミジア、ウレアプラズマ、梅毒などの検索を追加する。
5.咽喉頭の合併症
上気道の病変としては扁桃腫大、咽頭炎、急性喉頭蓋などが報告されている。疼痛以外に扁桃腫大などの器質的変化によって経口摂取困難、気道狭窄を呈する場合がある。鎮痛薬のほか、腫脹が強い場合には短期間のステロイド投与が治療選択肢である36。扁桃腺炎や急性喉頭蓋炎により気道緊急を生じた場合にはエアロゾル曝露対応をしつつ気道確保を行う。
6.呼吸器の合併症
HIV合併感染例では肺炎の合併が多く37、びまん性多発結節影や胸水貯留を呈することが報告されている11,38。ただし、HIV患者では他の日和見感染症による肺病変の可能性があるので気管支肺胞洗浄液、経気管支肺生検検体、胸水検体のエムポックスウイルスPCRとMultiplexPCRを検討する。二次性の細菌性肺炎を合併している場合には抗菌薬を追加する。
7.循環器の合併症
胸痛を訴えや心不全徴候がみられる場合にはウイルス性心筋炎・心膜炎を考慮する。心電図変化に乏しい場合は心臓MRIが有用である。致死性不整脈や心不全の発症に留意してモニタリングを行う。心筋炎18例のレビューでは、6例で抗ウイルス薬の投与、5例は抗炎症療法(コルヒチン、NSAIDs)で治療され、全例が生存している39。ウイルス性心筋炎の治療選択肢である免疫グロブリン、ステロイド、シクロスポリン、アザチオプリンの使用に関してはエムポックス症例での報告がなく有効性は不明である。また、心収縮能の維持された心膜炎へコルヒチンとイブプロフェンを投与した報告例もある40。
8.中枢神経の合併症
中枢神経系の症状としては頭痛が最も多く、筋痛、めまい、倦怠感などの訴えが多い。
重篤な神経学的合併症としては、四肢筋力低下・麻痺が0.4%、錯乱が0.23%、脳炎が0.23%で報告されており41、横断性脊髄炎・急性散在性脳脊髄炎の報告もある41,42。脳脊髄液検査ではリンパ球優位の細胞数増多を呈することが多いが、髄液エムポックスウイルスPCR検査は陰性であることも多い41,42ため、エムポックス診断が確定している場合でも他疾患除外目的に髄液Multiplex PCRを積極的に考慮する。必要に応じて鎮静、抗てんかん薬の投与を行うが、テコビリマトはミダゾラムの血中濃度を低下させるため43、両者を併用する場合は注意が必要である。
病態生理としては自己免疫機序の関与も示唆されており44、重症例に対して免疫グロブリン療法、ステロイドパルス療法、血漿交換療法、リツキシマブ投与の併用で改善を得た報告がある41,42。なお、2026年1月15日時点のPubMed検索では、髄膜炎のみを呈したエムポックス症例は報告されていない。
9.眼の合併症
角膜炎・結膜炎の頻度が高く、そのほか角膜・結膜の潰瘍、眼瞼膿疱などが報告されている45,46。また、結膜炎は全体で約8.9%に認められるが、ウイルスクレードにより頻度は大きく異なり、クレードⅠでは約21.9%、クレードIIbでは約2.7%と報告されている。角膜潰瘍、眼瞼・結膜病変、視力障害などの重篤な眼合併症は全体としては低頻度であるが、地域差や免疫状態の影響を受けやすく、特にHIV感染を合併する症例では重症化リスクが高い46。
オルソポックスウイルスによる眼病変に有効とされるトリフルリジン点眼薬を併用した報告があるが47、2025年3月15日時点で、わが国では未承認薬である。結膜充血や眼脂増加がみられる場合は、二次性の細菌性結膜炎を念頭に眼科診察を依頼する。また、眼窩蜂窩織炎も生じ得るので11、眼周囲にエムポックスの皮疹がある症例で眼瞼の腫脹や発赤、眼球運動制限を伴う場合には画像評価を検討する。
10.骨・関節の合併症
膝関節の単関節炎合併例が報告されている48,49。関節痛はエムポックスの皮疹出現と同時期から出現する。関節MRIでは関節液貯留、滑膜炎所見、骨への炎症波及を呈することがある。関節液は単球優位の細胞数増加がみられ、エムポックスウイルスPCRが陽性となる。性的接触がエムポックス感染の契機となっている場合には、淋菌性関節炎やクラミジアによる反応性関節炎の可能性があるので、これらの性感染症の検索を行う。治療は鎮痛薬による対症療法であり2~3週間で改善する。
Ⅳ 療養上の注意事項
本項ではエムポックスと診断され入院中の患者へ注意すべき事項について述べる。
入院中の感染対策は「5-Ⅰ医療機関(病院)における対策」を参照のこと。
また、エムポックスと診断され、入院せずに自宅での療養を勧められた人、退院後にも自宅療養を行う人、同居者がエムポックスと診断あるいは疑いがある場合については、「4-Ⅲ自宅での対策」を参照されたい。
エムポックスで入院中の患者の面会は医療機関の規則に従うが、WHO、UK、ECDC等では医療機関での面会制限の明確な記載は確認できず、米国CDCは、患者のケアや健康増進にかかわる人に限定し、患者の年齢、自己判断能力、感染管理の遵守能力、訪問者が患者に対して高リスクにさらされているか、その他の要素を考慮し決定する50としている。
血小板輸血では感染しなかったという報告51があるが、エムポックスの患者または疑いとされた人は、皮疹が治癒し、落屑するまでの間に献血は控えることを伝える。
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感染対策
Ⅰ 医療機関(病院)における対策
- エムポックス疑い例やエムポックス患者に接する場合は、接触、飛沫、空気予防策を実施し、可能な範囲で患者を換気良好な部屋(個室が望ましい)に収容し、N95マスク、手袋、ガウン、眼の防護具を適切に着用する1,2。
- 医療従事者は、個人防護具の装着前と外した後を含め、標準予防策に沿って手指衛生を行う1,3。
- 適切な手指衛生と個人防護具の使用に関し、平時から定期的に訓練を行っておく。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者には、可能な限り不織布マスクを適切に着用させ、水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する1,2。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者が滞在しうる環境は、通常の清掃を行い、その後、消毒(消毒用エタノールなど、エンベロープウイルスに対して強い消毒効果を発揮する薬剤)を行う1,4。
- 廃棄物は感染性廃棄物として扱う1。病変部位の体液で汚染された医療廃棄物は、体液乾燥による塵埃感染防止の観点から、しっかりと密閉して廃棄することが望ましい。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者の診察台は、不織布シーツやビニールシーツなどを使用し、診察後は廃棄、もしくは薬剤(前述)を使用した消毒を行う。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者のリネン類などは、破棄が望ましいが、破棄が難しい場合は、上記個人防護具を付けて扱い、不用意に振り回したりせず、静かにビニール袋などに入れて密閉した状態で運搬し、洗濯機に入れ、通常の洗剤を用いて洗濯を行う。洗濯した後は再利用可能である。リネン類などを扱う際は、手指衛生(流水と石鹸による手洗い、または擦式アルコール手指消毒薬での消毒)を頻回に行う1,2。なお、WHO、米国CDC、英国UKHSAでは、温水による洗浄を推奨しているが、根拠となる十分なエビデンスはまだない1,2,5。
- 感染の危険がある曝露があった場合、曝露後予防接種を考慮する(「6ワクチン」参照)。曝露後4日以内の接種が望ましいが、14日以内であれば効果が期待できる。
- 医療従事者の針刺し切創によるエムポックス罹患報告6-11もあることから、検体採取時の針刺しには特に注意し、針刺し切創の際は、すみやかに報告し、曝露後予防接種を考慮する。
- エムポックスで入院中の患者の面会は医療機関の規則に従うが、WHO、UK、ECDC等では医療機関での面会制限の明確な記載は確認できず、米国CDCは、患者のケアや健康増進にかかわる人に限定し、患者の年齢、自己判断能力、感染管理の遵守能力、訪問者が患者に対して高リスクにさらされているか、その他の要素を考慮し決定する1としている。
- 血小板輸血では感染しなかったという報告12があるがエムポックスの患者または疑いとされた人は、皮疹が治癒し落屑するまでの間に献血は控えることを伝える。
資料1(章末)に、医療機関における具体的な感染対策として、国立国際医療センターで使用している 『エムポックス感染対策マニュアル(2023年11月9日)』6をまとめた。
Ⅱ クリニック(診療所)における対策
海外におけるガイダンス(WHO、米国CDC、英国UKHSA等)では、クレード(Ⅰ/II)で感染対策(隔離・PPE・環境消毒など)を区別する明確な記載はなく、患者の重症度やエアロゾル発生手技などのリスク評価により対策を強化する。
本項では、クリニック(診療所)においてエムポックス疑い例や確定患者の対応における感染対策について述べる。疑い例や確定患者の自宅での対策については、次項を参考にされたい。
クリニック・診療所におけるエムポックス疑い患者対応のフローチャートを示す(図5-1)」。

- ・受診の際に受付で症状(38.5℃以上の発熱、皮疹または粘膜疹、頭痛、咽頭痛など)を確認し、性的接触や渡航などの曝露歴がある場合にはエムポックス疑い例として対応を開始する。
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者に接する場合は、標準予防策に加えて接触、飛沫予防策を実施する
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者は換気良好な部屋や個室に収容し、換気を十分にすることが望ましい。
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者に接する場合は、医療従事者は不織布マスク、手袋、ガウン、眼の防護具を適切に着脱する1,2。
- ・感染管理についてクリニックにてすべて対応が難しい場合、ガウン、眼の防護具を着用せず、手袋と不織布マスクのみを着用した対応でも医療従事者の感染リスクを低減できる。
- ・ただし、エムポックス疑い例やエムポックス患者に広範囲の発疹、顔面など被覆ができない部位の発疹、呼吸器症状あるいは全身症状がある場合、医療従事者はN95マスク、ガウン、眼の防護具を使用する13。
- ・米国、英国やECDCは空気予防策を講じなかった医療従事者は曝露ありと判定しているが、フランス病院衛生協会(SF2H)では、空気感染は確認されておらず、エムポックスウイルスの感染経路は長時間にわたる密接な身体的接触と考え、標準予防策と不織布マスクを推奨している13。クリニックにおいては、短時間の滞在であり、密接な身体接触機会が少ないことから、疑い例や患者の症状に応じN95マスクを選択・使用する。
- ・医療従事者は、個人防護具の装着前と外した後を含め、標準予防策に沿って手指衛生を行う1,3。
- ・適切な手指衛生と個人防護具の使用に関し、平時から物品準備をしておくとともに、定期的に訓練を行う。
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者には、不織布マスクを適切に着用させ、水疱を含む皮膚病変はガーゼなどで被覆する1,2。
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者が滞在しうる環境は、通常の清掃を行い、その後、消毒(消毒用エタノールなど、エンベロープウイルスに対して強い消毒効果を発揮する薬剤)を行う1,4。
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者の診察台は、不織布シーツやビニールシーツなどを使用し、診察後は薬剤(前述)を使用した消毒を行う。
- ・環境清掃は乾拭き・掃除機がけによる再飛散を避け、湿式清掃を原則とする1,14。
- ・エムポックス疑い例やエムポックス患者のリネン類などは、不織布マスク、手袋、ガウン、眼の防護具を付けて扱い、不用意に振り回したりせず、ビニール袋などに入れて密閉した状態で運搬し、洗濯機に入れ、通常の洗剤を用いて洗濯を行う。洗濯した後は再利用可能である。リネン類などを扱う際は、手指衛生(流水と石鹸による手洗い、または擦式アルコール手指消毒薬での消毒)を頻回に行う1,2。
- ・廃棄物は感染性廃棄物として扱う1。病変部位の体液で汚染された医療廃棄物は、体液乾燥による塵埃感染防止の観点から、しっかりと密閉して廃棄することが望ましい。
- ・感染の危険がある曝露があった場合、速やかに保健所に報告し、曝露後予防接種を考慮する(「6ワクチン」参照)。曝露後4日以内の接種が望ましいが、14日以内であれば効果が期待できる。
- ・医療従事者の針刺し切創によるエムポックス罹患報告6-11もあることから、検体採取時の針刺しには特に注意し、針刺し切創の際は曝露後予防接種を考慮する。
なお、医療施設、クリニックでのエムポックス疑い例、患者における感染管理の概要を表5-1にまとめた。

Ⅲ 自宅における対策
本項では以下の方々を対象としている。
- エムポックスと診断され、入院せずに自宅での療養を勧められている人
- エムポックスと診断され、退院後自宅療養を勧められている人
- エムポックス検査や検査結果を待っており、自宅で待機を勧められている人
- 同居者がエムポックスと診断あるいは疑いがある場合
1.エムポックス疑い例自身やエムポックス患者自身の対策
- 日常的に行う手洗い(食事前後、排泄後、外出から帰宅した後など)のほか、自身の患部に触れた後や洗濯時に、衣服やリネン類などを扱った場合などでも手洗いを行い、普段以上に手指衛生を励行する。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者がいる空間は、換気を十分行うようにする2,14。
- 自室のベランダやバルコニーを使用することに問題はない。ただし、屋外スペースを使用する際、他の人から少なくとも1m離れる15ことが望ましい。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者は、発疹の消失、痂皮が落屑し新しい皮膚が形成されるまで(概ね発症から21日程度)は、皮膚や粘膜の直接接触や汚染された環境表面から周囲のヒトや動物に感染させる可能性があるため16、約2m以内で他の人と接触(食事など)する場合には、皮膚病変を覆い、不織布マスクを適切に着用するのが望ましい。
- 妊婦が罹患し、流産や子宮内胎児死亡の報告例17があることから妊婦との密な接触も避ける。
- リネン類などの洗濯は可能な限り、エムポックス疑い例やエムポックス患者本人が行う。他の人が洗濯をする場合、医療機関やクリニックでのリネン類などの洗濯に準じて行う。洗濯ができない素材の物品(ソファなど)は、防水性もしくは拭ける素材のもので覆っておく。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者が接触したベッドやトイレなどの場所は、使い捨て手袋を着用して清掃し、その後、消毒薬(アルコール含有の消毒薬、または0.05%次亜塩素酸ナトリウム)で清拭する。清掃や消毒実施中、特に終了後は、手指衛生を適切に行う14,16。
- 可能であれば家族や他の人とコンピューターやその他の機器を共有しないようにする。もし、パソコンやその他の機器を共有する必要がある場合は、使用後に必ず清掃する15。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者は、発疹の消失、痂皮が落屑し新しい皮膚が形成されるまでは、ペットの哺乳類との接触を避ける。2022年に2人のエムポックス患者と同居し、同じベッドで寝ていた犬の感染事例が報告されている18。
- やむを得ず、疑い例やエムポックス患者が自宅でペットの世話をする場合は皮疹を覆い、不織布マスクを着用する。
- 自宅療養中の患者は、発熱と皮膚症状を毎日確認し、水分補給、適切な食事、十分な睡眠をとることが大切である。また必要に応じてメンタルヘルスのサポートを受けられることが望ましい。
- 自宅隔離中は来客との対面接触を避ける。来客に持参してもらった物品は玄関や室外に置いてもらい、室内に人をいれないようにする15。
- 自宅療養中の自宅以外での滞在(旅行)や症状があるときの外出は行わない19ことが望ましい。
2.エムポックス疑い例やエムポックス患者の同居者やペットの対策
- 同居者は、積極的に手洗いもしくは擦式アルコール消毒薬を使用し手指衛生を行う。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者とは、リネン類などの共有を避ける14,15。
- 家庭内清掃はウイルスを含む埃を巻き上げないよう、フローリングワイパーや掃除機は使用せず湿式清掃を行う。
- エムポックス疑い例やエムポックス患者と共有したリネン類などは、振らずにまとめ、洗濯機にかける。使用後リネンを扱った後は手洗いを行う14,15。
- 自宅にペットがいる場合、ペットとエムポックス疑い例やエムポックス患者との接触を避け、同居者がペットの世話をすることが望ましい14。
- 自宅にペットがいる場合、彼らが利用した後のリネン類などとの接触も避けることが望ましい。
- 一方で、ペットがエムポックスウイルスに感染した可能性がある場合、ケージなどに隔離し、接触する場合は手袋、不織布マスク、眼の防護具、抱き上げるなどの際はガウンの着用(なければ長袖の衣類を代用とし洗濯)が推奨される。
3.隔離が終了した時
- 隔離期間が終了しても、ウイルスが室内に残っていることがあるため、室内の清掃とリネン類の洗濯を行い15、室内を換気する。
- エムポックス感染から回復後12週間はコンドームを使用する15,20。
*資料3(章末)に「エムポックスと診断、または検査結果をお待ちの方へ」をまとめた。
このほか、下記に掲載されている情報ツール21を参考として示す。
(MPOX GUIDE BOOK. https://ptokyo.org/eBook/mpox_guide_book/)
- 1.CDC. Mpox. Mpox infection prevention and control in healthcare settings. Feb 9 2026.
https://www.cdc.gov/mpox/hcp/infection-control/healthcare-settings.html〔2026/2/18閲覧〕 - 2.WHO. Clinical management and infection prevention and control for monkeypox, Interim rapid response guidance. June 10 2022 Infection Prevention and Control at Health Facilities(7 Recommendations)
https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/355798/WHO-MPX-Clinical_and_IPC-2022.1-eng.pdf?sequence=1〔2026/2/18閲覧〕 - 3.WHO Guidelines on core components of infection prevention and control programmes at the national and acute health care facility level.
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https://www.cdc.gov/monkeypox/hcp/infection-control/at-home.html〔2026/2/6閲覧〕 - 15.UK Health Security Agency. Mpox guidance collection.
https://www.gov.uk/government/collections/monkeypox-guidance〔2026/2/18閲覧〕 - 16.国立感染症研究所国立国際医療研究センター エムポックス患者とエムポックス疑い例への感染予防策(一部改正2023年5月26日)
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https://www.cdc.gov/monkeypox/travel/index.html〔2026/2/6閲覧〕 - 20.WHO. Mpox. Questions and answers 16 October 2024
https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/mpox〔2026/2/6閲覧〕 - 21.特定非営利活動法人ぷれいす東京 MPOX GUIDE BOOK
https://ptokyo.org/eBook/mpox_guide_book/〔2026/2/6閲覧〕
ワクチン
Ⅰ エムポックスワクチンの概要
痘そう(天然痘)ワクチンは、痘そうウイルスやモンキーポックスウイルス(別名エムポックスウイルス:MPXV、以後エムポックスウイルスと表記)と同じオルソポックスウイルス属の一つであるワクチニアウイルスをワクチン株として使用したワクチンである。また、オルソポックスウイルス属のウイルス間の抗原交叉はよく知られており、痘そうワクチンによるエムポックスに対する発症予防効果が、天然痘根絶後の1980年代コンゴ民主共和国での研究で85%と推定され1、2003年に米国で発生したエムポックス流行事例の際の調査では、痘そうワクチン接種者ではエムポックスウイルスに対する防御免疫が誘導されていたことが示される2など、エムポックスに対する予防効果が報告されてきた。
日本で開発された痘そうワクチン(一般名:乾燥細胞培養痘そうワクチン)は、天然痘の根絶期に使われたワクチン株であるリスター株を親株として作成されたLC16m8株由来の弱毒化生ワクチン(以下、LC16ワクチン)であり、天然痘に対する予防ワクチンとして1975年に承認(凍結乾燥製剤としては、1980年8月に承認)されている。
2022年7月6日に、LC16ワクチンの「効能または効果」に「エムポックスの予防」の適応を追加する製造販売承認の一部変更が申請された3。これに対し、LC16ワクチンのエムポックスに対する有効性(免疫原性)を確認した、米国での臨床試験および日本人での使用成績に関する公表文献4-7と、従来の痘そうワクチンで問題となっていた種痘後脳炎・脳症、皮膚合併症、心筋・心膜炎などを引き起こすリスクがきわめて低く、小児から成人まで幅広い年齢層に対して接種可能な高い安全性を有するワクチンであるとの評価に基づき、2022年8月にLC16ワクチンによるエムポックスの予防が薬事承認された。
安全性の評価事例としては、1973~1974年にかけて、LC16ワクチンが小児約5万例に接種されたが、問題となる副反応は認められなかったことが報告されている8,9。このうち、特に詳細な臨床的観察が実施されたのは10,578例であり、1974年にLC16ワクチンを接種された9,538例について、善感率は9,538例中9,075例(95.2%)、善感者のうち14日間以上の観察が可能であった8,544例中の発熱者(37.5℃以上、接種4~14日後)は663例(7.8%)であり、有熱期間は1日のみが発熱者の60.6%を占め、また発熱者の85%が2日以内であった。
また、世界保健機関(WHO)は、2024年8月に発表されたエムポックスワクチンのポジションペーパーにおいて、免疫不全のない、妊娠女性以外の人に対するワクチンとしてLC16ワクチンを含むエムポックスワクチンの使用を推奨している10。また、2024年11月にはWHOの緊急使用リストに追加された11。このワクチン製剤は2~8℃の冷蔵保管で2年間保管することができ、室温(37℃以下)でも4週間保管することができる12など、コールドチェーンが整備されていない地域でも扱いが容易であり、1回で必要な接種を完了できることなどから、流行地域での活用が期待される。
欧米では、LC16ワクチンと同じ第3世代であるが、ウイルス複製能のない痘そうワクチン(MVA-BNワクチン)がエムポックスに対して承認され、エムポックスに対する有効性が報告されている。2024年9月には、WHOはMVA-BNワクチンを12~17歳への適応を追加し、ワクチンそのものを事前認証した13。また、mRNAワクチンを含む新たなエムポックスワクチンが早期臨床開発段階にある。痘そうワクチンの種類を図6-1にまとめた14。

Ⅱ 曝露前予防および曝露後予防
一般に予防接種は、リスクとベネフィットを勘案した症例に応じた判断となるが、職業曝露高リスク者および感染の高リスクグループに対しての一次予防(曝露前)ワクチン接種(Primary preventive vaccination:PPV)と、エムポックス患者の接触者に対する曝露後ワクチン接種(Post-exposure Preventive Vaccination:PEPV)が推奨されている10。
1.曝露前予防接種
国内の審議会においては、曝露前予防として、エムポックス診療を行う可能性が高い医療従事者、エムポックスウイルスを取り扱う研究者、検査技師、公衆衛生対応チームが当面接種を考慮する対象とされている15。一方で、エムポックスの流行を防ぐ手段として、現時点でのリスクとベネフィットを考慮すると、エムポックスワクチンの一般集団への接種は必須ではなく、また世界的に推奨されていない。
また、WHOはポジションペーパーにおいて、職業曝露高リスク者(エムポックス患者に接する可能性のある医療従事者、エムポックスウイルスを取り扱うラボ従事者、エムポックス診断を実施する臨床ラボ従事者、アウトブレイク対応チーム)および感染の高リスクグループ(ゲイ・バイセクシュアルその他MSMを自認する者、複数の性的パートナーがいる者)、小児を含めたエムポックスの流行地域に居住する人々に対して曝露前接種を推奨している10。
国立感染症研究所は、2024年3月時点での評価において、当該ワクチンについて「感染者の接触者、高リスクグループのいずれについても、当面リスクベネフィットを評価しつつ、本人の希望に応じて、また国内での発生状況に応じて、曝露前接種及び曝露後接種の機会提供が検討されるべきと考えられる」と、評価している16。
国立国際医療研究センターは、50名の健康な医療従事者を対象とした特定臨床研究の評価において、LC16ワクチン接種により4週間後には、エムポックスウイルスに対する十分な中和抗体が誘導されたが、時間経過とともに減少したこと、重篤な有害事象はなく、一般的な皮膚反応が最も多い有害事象であることが報告された。また、エムポックス発症に対するLC16ワクチンの予防効果を評価することなどを目的に、エムポックスへの罹患リスクが高い人に対し、臨床研究を通じてLC16ワクチンを用いた曝露前接種を、2023年6月から開始、2024年12月まで実施された17。当該研究では、研究評価期間に研究参加者からエムポックスの発症がなく、有効性は評価できなかったが、ART治療により安定的な免疫状態(過去の評価でCD4が250/µL以上)にあるHIV感染者352人が安全にLC16ワクチンの接種を受けることが可能であった。また、中和抗体検査による免疫原性の評価においても十分な免疫応答を誘導することが示された。
2.曝露後予防接種
エムポックス患者の接触者〔患者の性的パートナー、同居人、適切な個人防護具を着用せずに患者の皮膚、粘膜、体液、呼吸器飛沫、体液に汚染された物質(寝具など)に触れた可能性のある人〕について、発症リスクと重症化予防を目的として、曝露後14日以内かつ発症前、理想的には曝露後4日以内の接種が推奨されている10。
国立国際医療研究センターでは、2022年6月より、エムポックス患者に対する積極的疫学調査により判明した接触者に対して、特定臨床研究において、エムポックスにおける曝露後予防接種としてのLC16ワクチンの有効性および安全性を検討する非盲検単群試験を開始し、2022年12月までに6名の接種対象者に曝露後予防接種を実施した18。結果、被接種者において、発熱、発疹、リンパ節腫脹などの有害事象はあったものの、接種に関連する重篤な有害事象はなかった。また、接種者全員がエムポックスを発症しなかったが、参加者数が少なく、予防効果の検討は十分にできなかったことが報告された。当該研究は、2022年8月にLC16ワクチンにエムポックスの予防が適応追加されたことを受けて、実際の診療に合わせてより柔軟な対応が可能となるよう、2023年1月29日に、新たに「サル痘予防における痘そうワクチンの有効性及び安全性を検討する観察研究」が開始され、研究が引き継がれた19。研究対象者はエムポックスの患者と接触した者およびエムポックスウイルスに曝露した者であり、発症した患者は対象外としている。対象者の希望および医学的な評価に基づき、エムポックス患者との接触から14日以内に痘そうワクチンを接種している。また、2023年10月から研究の多施設化により、各地域において研究が実施されている19。
LC16ワクチンの接種に当たっては、一般的なワクチン製剤とは異なり、製剤の規格が集団接種を前提として1バイアルから250人以上の接種が可能であること、二又針を用いた特殊な接種方法(多刺法)で接種を行う必要があることなどから、国立国際医療研究センター予防接種支援センターでは、医療従事者向けに接種方法に関する説明の動画及び接種手順ガイドをホームページで公開している20。
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https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067596.pdf〔2026/1/19閲覧〕 - 13.WHO.
https://www.who.int/news/item/13-09-2024-who-prequalifies-the-first-vaccine-against-mpox〔2026/1/19閲覧〕 - 14.峰宗太郎、鈴木忠樹 エムポックスに対するワクチン IASR. 2023;6(44):88-89
- 15.厚生労働省 第63回厚生科学審議会感染症部会資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_26881.html〔2026/1/19閲覧〕 - 16.国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト 複数国で報告されているエムポックスについて(第7報)
https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idss/target-diseases/mpox/20240321/ra-0321.html〔2026/1/19閲覧〕 - 17.Okumura N et al. LC16m8 for Pre-exposure Prophylaxis against Mpox in a High-Risk Population: An Open-Label Randomized Trial. Clin Infect Dis. 2025;Feb 21:ciaf074. doi:10.1093/cid/ciaf074.
- 18.臨床研究等提出・公開システム サル痘における曝露後予防としての痘そうワクチンの有効性及び安全性を検討する非盲検単群試験
https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCTs031220137〔2026/1/19閲覧〕 - 19.UMIN-CTR サル痘予防における痘そうワクチンの有効性及び安全性を検討する観察研究
https://center6.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000056918〔2026/1/19閲覧〕 - 20.国立国際医療研究センター予防接種支援センター エムポックスの予防について
https://www.hosp.ncgm.go.jp/isc/vaccines/MNK/index.html〔2026/1/19閲覧〕








